新型コロナウイルスを防ぐワクチンはまだない。一方、麻しん、おたふく風邪、風しん、インフルエンザなどの感染症にはきちんとしたワクチンがあり、接種すればリスクを小さくすることができる。東京慈恵会医科大学葛飾医療センターの堀向健太助教は「ワクチンをいたずらに怖がらず、効能を知ってほしい」と訴える――。
彼女の幼児を抱いている母
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「まじめ」だからこそ、怖くなってしまう

──なぜ、感染症を予防するためのワクチン接種をためらう親御さんがいるのでしょうか。

【堀向健太先生(以下、堀向)】ひとついえるのは、ワクチン接種をためらう親御さんも、皆さん「子どもの健康と幸せ」を心から願っているんですよ。時々「子どもにワクチンを打たせないのは虐待だ」という人もいますが、それはまた、行き過ぎた表現と思うのです。たまたま間違った知識を入り口にしてしまっただけで、むしろ思いが強いから突っ走ってしまうのかもしれません。

こうした親御さんはまじめなかたが多いので、本当に自分は正しい選択をしているのかどうか、インターネットでワクチンの情報を熱心に調べます。ところが今の検索サイトは、個人の閲覧・検索履歴から、検索した人が「好む」検索結果を上の方に表示する機能がありますよね。安心したくて情報を集めるほど、自分の行動を肯定してくれる「ワクチンは危ない」とう意見のサイトにかたよる可能性があります。

さらにインスタグラムなど同じ考えの人たちが集まったSNSのコミュニティで、同じ意見を交わして「いいね」と肯定し合ううちに、ますます「ワクチンは怖い」「私たちは正しいことをしている」という意識が強化されてしまいます。エコーチェンバー現象と呼ばれるものです。