モハメド・エラリアンMohamed El-Erian

世界最大の債券運用会社、ピムコ最高経営責任者(CEO)兼共同最高投資責任者(Co-CIO)。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・スミス・バーニーなどを経て、ピムコに入社。その後、米ハーバード大学基金を運用するハーバード・マネジメント・カンパニーのトップを務め、2007年末にピムコに復帰。オックスフォード大学大学院にて経済学博士号、ケンブリッジ大学にて学士号を取得。

――オバマ政権は米国の経済政策を「小さな政府」から「大きな政府」へ大転換する格好になりますね。

オバマ政権にとってほかに選択肢はありません。

世界経済と呼ばれる大部屋があり、大部屋の中の酸素が4基のエンジンによって吸い取られている状況を想像してみてください。酸素を吸い取る過程は、信用創造機能の逆回転を意味する「デレバレッジ」です。1基目のエンジンは米国の建設・住宅部門。2006年に稼働を開始し、依然として加速しています。2基目のエンジンは金融部門。2007年夏に稼働を始め、なお高速回転中です。3基目のエンジンは米英の消費者。2008年夏にエンジンがかかりました。4基目のエンジンはリーマン破綻。2008年9月15日にスタートです。

要するに、順番にエンジンがかかり、昨年第4四半期には4基そろって回転し、大量の酸素を吸い取っていたのです。最終的に大部屋の中は極端に酸素不足になり、全員が倒れ込みました。数字で示しましょう。日本では月間輸出額が前年同期比で5割以上のペースで落ち込み、ドイツでは月間鉱工業生産が過去最大の下げ幅を記録しています。米国では、景気後退局面入りした2007年12月から今年3月までに500万人以上が失職し、このうち3分の2が過去5カ月間に集中しています。

さて、大部屋の中で大勢の人たちが倒れ込んでいるのを見て、政府はどう対応したでしょうか。酸素補給です。どのように酸素補給したのかというと、「大きな政府」です。第一に、大掛かりな景気刺激策をまとめました。第二に、市場へ介入して大手金融機関の支配権を握りました。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)やシティグループです。第三に、当局が自ら借り手に流動性を供給するメカニズムを構築しました。米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長の言葉を借りれば「サイドステップ」、つまり銀行システムを経由せずに資金を供給するという意味です。

以上の動きを見て、だれもが「再び『大きな政府』の時代がやってきた」と言うでしょう。ただ、オバマ政権は政治哲学として「大きな政府」を掲げているわけではありません。繰り返しになりますが、ほかに選択肢がないのです。