明らかに、愛知経協の調査からは、中堅・若手層のモチベーションの源泉が、上司から与えられるものや承認、曖昧でない役割設定や目的の明確化や賃金・賞与などの金銭面にあることを示している。PRESIDENTの調査でも、多くが給与をモチベータ(モチベーションの源泉)として重視している様子が見られる。いうなれば、成長や達成、チャレンジなどの、3.0レベルのモチベータから、2.0レベルへとモチベーションの源泉が回帰しているのである。

では、一体どうしてこうした結果になってしまったのであろうか。ひとつの仮説、そしてしばしば聞かれる原因は、若者や中堅の働く人の意識や価値観が変化したという主張である。彼ら・彼女らは、それまでの人たちに比べて、お金や仕事環境などに対する欲求が強いという説明である。また、彼らは、同時に自律性に欠け、上司からの指示や目標や役割の明確な設定を求める、という議論も多くの人から聞く。

つまり、人そのものがモチベーション3.0レベルから2.0レベルに退化した、という仮説だ。たしかにそれもあるだろう。私自身、多くの学生と日常的に付き合う中で、そう思いたくなることも多い。以前に比べ知的欲求や探究心が減少しているように感じる。知的探究心を起こさせるのがとても難しい。これを「人材退化説」と呼ぼう。

でも、本当にそれが根源なのであろうか。また、これが最近の若者特有の現象ならば、PRESIDENT調査に見られるように、部長層や課長層においても、50%前後が給与をモチベータと考えているのは説明ができない。

「人材退化説」に対して、私の仮説は「環境退化説」である。言うなれば、モチベーション3.0から2.0への回帰の背景には、今の職場環境が大きく変化し、働く人が求めるものが大きく変わってしまった、という仮説である。つまり、人材そのものは変化せず、組織として提供できている(または、できていない)要素が大きく変化し、そのため、表面的に見れば、3.0から2.0への回帰が起こっているように見えるということになる。

具体的に考えてみよう。例えば、ピンク派が挙げる、仕事による成長感やチャレンジ。これはいつの時代でも働く人のモチベーションの源泉だった。NHKのテレビシリーズ「プロジェクトX」に描かれたチャレンジに感動し、そこにあるチャレンジほどではないにしても、自分たちが経験したミニチャレンジをそれに重ねて、目頭が熱くなる中高年は多いだろう。

では、周りを見渡して、今、一体どれだけ職場にチャレンジがあるのだろうか。どれだけ成長感のある仕事があるのだろうか。この点については、すでにこのコラムでも何回も議論してきた。

ただ、注意しなくてはならないのは、職場から、チャレンジが減少し、人を成長させる仕事が提供できなくても、まだ、働く人が、チャレンジを求め、成長を期待しているのであれば、モチベーション3.0から2.0への回帰は起こらないことである。モチベーションの根底は欲求であり、今、手にしていないものを求める中で、モチベーションが喚起される。したがって、たとえ現在、与えられていなくても、働く人が成長や達成の可能性を感じれば、モチベータとしては有効なのである。