「ドングリの背くらべ」という表現もあれば「五十歩百歩」という言葉もある。似たり寄ったり、比べたところで大差ないことをいう。

対数の原理を利用した計算用具「計算尺」。関数電卓の登場で貴重品に。

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逆に、比較することさえ無駄に思える明白な差を、「雲泥の差」という。商品の売り上げや、わが子の成績順位を示すグラフの線が、ヨコ軸にべったり張り付くように伸びていたら、トップとは雲泥の差で、もはや比較する気にはなれない……かもしれない。

しかし50歩と100歩のあいだには、50歩という明らかな違いがあるように、ドングリの背にも必ず差はある。それが見えにくいだけのはずだ。よく見えないまま、ただ単純に比べていると、その差は何も語りかけてはくれないが、少しだけ細工をすると雄弁になる。雲泥の差といえども、雲と泥の距離感はまったく違うものになるだろう。

最近「書籍販売市場における隠れた法則性」(慶應義塾大学、井庭崇ほか)という論文を読んだ。全国2000以上の書店での書籍の販売データを解析し、販売冊数と順位の関係から「隠れた法則性」を導き出したものである。

図1(次ページ左)のグラフは、2006年5月における販売冊数(割合)と順位を示している。販売冊数(割合)とは、そのタイトルの販売冊数を、書籍全体の販売冊数で割った数字である。グラフでは、タテ軸にその販売冊数(割合)、ヨコ軸には第1位から第60万位まで順位が取ってある。第1位から第3位までの書籍名と販売冊数(割合)は、次のようになっているという。

(1)『ハリー・ポッターと謎のプリンス』2.47%
(2)『ダ・ヴィンチ・コード(上)』1.91%
(3)『ダ・ヴィンチ・コード(中)』1.63%

ちなみに最下位となった書籍の販売冊数(割合)は、0.00000582289%だったという。