さらにアルファ・ブロガーの記事を定期的に読む消費者は、アルファ・ブロガーとファッションセンスを共有し、年齢的にも近い人が多い。ブランドに心から共感してもらえるアルファ・ブロガーを発見しさえすれば、ブランドの認知度は確実に向上する。インターネットではこのようにピンポイント攻撃が可能になる。テレビと違って、興味を持つ人が能動的にアクセスしているので、アクセス数は、視聴率よりも認知度を測定する確実な物差しになる。

しかしながら、口コミマーケティングは常に成功するとは限らない。口コミに向いた商品と向いていない商品があるからだ。たとえば、個性のない商品は話題性に乏しいので、口コミが生まれない。東京電力の電気と関西電力の電気には差がないので、口コミの対象とはなりえない。しかし、もし東京電力の電気に健康効果があると証明されたら、口コミの対象になる。

SNSでは「たくさんの消費者のなかで、誰に聞けば、当該の商品やサービスについてもっとも適切な情報を得ることができるのか」をいつも問うことが大切である。無作為抽出のサンプル集団からアンケートをとっても、ベストの情報を得ることができるとは限らないからだ。マーケティング全般に関しても、筆者はアンケートを取ることに疑問を抱いている。たとえば、車を買うつもりがないときにどんな車がよいかと聞かれたら、かなりいい加減に答えるだろう。嘘をつくつもりがなくても、非現実的な理想を交えたり、家族の意見を考慮に入れないなど、実際の購入とは違った意思決定プロセスをたどって答えるリスクがある。信頼できる情報は、身銭を切って買った人のみから入手できるのである。

また、取り扱う商品が新しく開発されたものであれば、消費者にとって未経験のものなので、その商品の将来性や潜在的な魅力を感じとれる消費感性の高いプロシュマー(消費者として専門家の境地に達した人)を探す必要がある。ロイヤルティの高い顧客を囲い込んでファンクラブをつくると、このなかに影響力の大きいプロシュマーを見つけることができるだろう。身銭を切って購入した複数のプロシュマーにインタビューし、販売ターゲットを絞ることがマーケティング調査の第一歩である。