[7] 使命を変更する

 障害や行き詰まりに対処する際は、質問によってプロジェクトのビジョンや使命を変更できる場合もある。ドン・ウィンクラーは「パワー・クエスチョン」が有効だと言う。パワー・クエスチョンとは、彼の定義によると「人の思考を突破口へと導いてくれる」質問のことだ。

 「パワー・クエスチョンはたいてい、それまで当たり前だと思われていたことに疑問を投げかける」
 
[8] フォローアップを確実にする

会議が終わってからも、質問をやめないようにしよう。質問し続けるマネジャーは、予期せぬ事態を避けることができるし、社員がひとりよがりになるのを防ぐこともできる。フォローアップの質問をすることは、部下にとってまだなじみの薄い新任のマネジャーに、特に有効な手段である。マネジャーが細かい点にも配慮していることを部下に知らせることになり、部下の気を引き締めさせるからだ。

[9] 常に反対意見を歓迎する

最もうまく練られた計画とは、そのプロジェクトの遂行期間を通じて、どれほど厳しい質問にも耐えられる計画をいう。米軍では、上官が立てた計画に部下が異議を唱えることを奨励している。コーエンは「コマンド・プレゼンス(指揮系統の明確化)」という概念に触れながら、こう語る。「優れた上官は、部下が質問しやすい雰囲気をつくることができるが、それは言葉の言い回しよりも、むしろ口調や態度によるところが大きい」。

軍は厳しい体験を通じてこれを学習してきたのである。作戦が失敗して大勢の兵士が傷つくより、時宜を得た質問で幹部を怒らせるほうがましなのだ。

[10] 学習する文化をつくる

 質問することが許されるだけでなく、よいこととして奨励される雰囲気をつくることで、学習への新しい道が開かれる。スティーヴン・ギルはこう助言する。「部下を試したり、罰したり、叱責したりするためではなく、学習のために質問できるよう、他のマネジャーを訓練してほしい」。

ギルはさらにこう勧める。「マネジャーには、社員に自分が経験したことをじっくり振り返らせるための、模範解答のない質問ができるようになってもらいたい」。具体的には、「結果はどうだったか。それは望んだ結果にどれだけ近かったか。もっと成功に近づけるために、何ができたか……」といった質問だ。要するに、質問するというプロセスに無自覚であってはいけない、ということだ。

「質問するという行為について自覚的になってほしい」とコーエンは言う。

「優れたリーダーシップと優れた教授法には、一般に思われている以上に共通点が多い」

(翻訳=ディプロマット)