ムサコを名乗ると不幸になるのか

2019年10月、日本各地に被害をもたらした台風19号。武蔵小杉駅前のタワーマンションでは地下の電気系統が浸水し、停電や断水などの被害が起きた。「住みたい街」ランキングの上位に入るなどキラキラしたイメージの“ムサコ”。連日の報道やネット民たちの心ない中傷のおかげで、すっかり「残念な街」というレッテルを貼られた。

一方、こっちのムサコは閑散とする……。
一方、こっちのムサコは閑散とする……。

そもそも、武蔵小杉は昔からキラキラした街ではなかった。近辺で育った住民は昨今のイメージに違和感を覚えていたようだ。同エリア出身のコラムニスト河崎環氏は自らを著書(※)の中で「ムサコネイティブ」と語り、かつての武蔵小杉を「NECや富士通、サントリーなどの大規模工場や研究所がある、どこか灰色の町」と表現。近年の進化については、「変わりゆく同級生を遠くから見守るような気持ち」「素朴だった同級生が激変して、マインドまでイケイケになったのを目の当たりにし、その違和感をどう処理していいのか戸惑う」と書いている。

さて、この騒動で激怒しているのは武蔵小杉住民だけではない。同じ「ムサコ」の愛称で親しまれる武蔵小山の住人も行き場のない怒りに震える。「今回のことで『ムサコ』という街のブランドの価値を下げた武蔵小杉。断じて許せません」と住民A子(35)は語る。

※河崎環著『オタク中年女子のすすめ』(プレジデント社)