10月1日にたばこ税の税率が引き上げられた。この影響で、JT(日本たばこ産業)の代表的銘柄である「マイルドセブン」は1箱300円から410円へ36%超の大幅値上げとなった。たばこ消費には大きくブレーキがかかり、JTの業績見通しでは来年3月期の国内たばこ販売数量は前年比17.3%のマイナス。値上げ後の10月からの1年間では、25%を上回る減少となりそうだ。

増税直前の9月には空前の駆け込み需要が発生した。そのため翌10月の売り上げは前年同月比7割減と壊滅的に。(PANA=写真)

増税直前の9月には空前の駆け込み需要が発生した。そのため翌10月の売り上げは前年同月比7割減と壊滅的に。(PANA=写真)

打撃を受けるのは、JTやBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)といったメーカーだけにとどまらない。とりわけ深刻なのが、専業比率の高い葉たばこ農家や、零細なたばこ小売店など関連事業者への影響だ。

ここ10年、日本では喫煙者率の低下と高齢化によって、たばこの国内消費はじりじりと減少を続けてきた。JTの調査では、日本国内の喫煙者率は2000年の32.9%から10年には23.9%に低下している。さらに男性に限れば、53.5%から36.6%という驚くべき急落ぶりだ。

その間、葉たばこ農家の耕作者数は1万人強に半減し、全国に30万店以上を数えた小売店数は29万店を割るようになった。売り上げがさらに減少すれば、転廃業を強いられる農家や商店が増えるだろう。

非喫煙者にとっても他人事とは言い切れない。たばこの売り上げが想定外の規模で減少すれば、たばこ関連の税収も低下し、ただでさえ厳しい財政運営をさらに危うくする可能性があるからだ。

09年度のたばこ税収は総額2兆795億円。消費税に換算すると1%分を上回る。これを国と地方とで分け合うのだ。国税は国たばこ税とたばこ特別税を合わせて1兆377億円、地方税は1兆418億円。国税・地方税収入のそれぞれ2.5%ほどを占める大事な財源である。

ちなみに、このうち国税のたばこ特別税とは旧国鉄の債務償還にあてるため1998年に創設された特別税だ。09年は1947億円で、たばこ税全体の9%超を占めている。

過去10年において、たばこ税は3度にわたり引き上げられた。03年と06年の増税額はたばこ1本あたり1円で、マイルドセブンの値上げ幅でいうと20~30円にとどまった。そのため税収への悪影響は見られず、増税の年も翌年もたばこ税収は横ばいで推移した。

しかし今回の増税は、たばこ1本あたり3.5円、1箱の価格では110円と過去にない大幅な引き上げだ。財務省は10年度のたばこ税収を前年比1061億円ものマイナスと見込んでいる。