先日、ある女性の研究者から「日本で行われる国際シンポジウムは国際的とは言えないわ。だってパネリストに女性が少なすぎるもの」と言われました。確かに、大きなシンポジウムでも女性パネリストが登壇することは多くなりましたが、欧米のように「必ず半数は女性」ということにはなっていません。特に現代アート業界の場合は、男性だけの国際シンポジウムが圧倒的に多いし、その会場に参加している聴衆も男性が多いのが実情です。女性の社会進出とその業界の国際化は比例しているのかもしれません。

国際化が遅れている日本のアート業界を抜け出して海外で活躍してきた日本人女性アーティスト達がいます。水玉や網をモチーフにし若者にも人気の画家・草間彌生さん、ジョン・レノンの未亡人で詩人としても評価が高いオノ・ヨーコさん、ナムジュン・パイクさんのパートナーでもあった久保田成子さんらは、すでに各国の美術館に作品がコレクションされています。近年、作品の再評価が始まったオノ・ヨーコさんは「世界の美術界に新たな可能性を与えた」として、今年6月から始まる第53回ヴェネチアビエンナーレで生涯業績部門金獅子賞が贈られることが決まりました。うれしいニュースです。そう思って現代アートの分野での女性の活躍を考えていたら、男性よりも力強いことが見えてきました。

澤田知子のゴスロリファッションのシリーズとミスコンシリーズの作品。2008年パリフォト、大阪のギャラリーMEMの展示風景より。
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澤田知子のゴスロリファッションのシリーズとミスコンシリーズの作品。2008年パリフォト、大阪のギャラリーMEMの展示風景より。

数年前、ニューヨークのMoMAの常設コレクションを眺めていたら、その中に澤田知子さんの作品を発見し、「おおっ」とびっくりした覚えがあります。澤田さんの作風は、自ら古今東西の名画に扮したり映画女優になってしまったりする森村泰昌さんの娘のような作風で、変装し外見を変えてしまうことで、高校の1クラスまるごと全員に澤田さんが扮したり、オートマチックに撮影できる証明写真のID写真400名に一人で扮してしまう作品です。お見合い写真シリーズやゴスロリ写真シリーズでも、すべて澤田さん本人がたくさんの人に扮しています。

澤田知子さんは、第1回横浜トリエンナーレでインターコンチネンタルホテルにバッタを出現させた現代アーティストの椿昇氏の教え子で、2004年の木村伊兵衛賞の受賞者です。師匠である椿昇さんの作品よりも先にMoMAにコレクションされていることは、まことにあっぱれなことだと思います。外見は多種多様であっても、中身は澤田知子さんという一人の人間である彼女の作品では、普段、人は外見や容姿で判断していることを聴衆に突きつけ、同様に女性の存在を際立たせています。