2017年に『専業主婦は2億円損をする』を出版し、大きな話題になり、「女がそんなに稼げるわけがない」「好きで専業主婦をやってるわけじゃない」という怒りのコメントも寄せられたのだそう。それでも著者の橘玲さんは、2億円という数字は低めに見積もったものと言います。この国で専業主婦になること、そして妻を専業主婦にさせることは何を意味するのか。生涯賃金の観点から考えます。

※本稿は橘玲『2億円と専業主婦』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

学歴別の男女の生涯賃金はいくらになる?

これからの話の前提として、日本という国で働くことで一生のあいだにどれほどの収入が得られるかを確認しておきましょう。データは、厚生労働省所管の調査機関、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)から刊行された『ユースフル労働統計2018』で、「賃金構造基本統計調査」にもとづいた、日本人の生涯賃金についてもっとも信頼性の高いデータです。これは、「女がそんなに稼げるわけがない」という「炎上」への回答にもなります。

ここでの生涯賃金は、「学校を卒業してただちに就職し、その後、60歳で退職するまでフルタイムの正社員を続けた場合」の総額で、退職金は含まれていません。その金額を示したのが下の図です(図表1)。

学歴別生涯賃金

生涯賃金は学歴別に算出されていて、「大学・大学院卒」の場合、男性は2億6980万円、女性は2億1590万円です。専業主婦になる(働かない)という選択はこの賃金を「捨てる」ことですから、「専業主婦は2億円損をする」のです。

生涯賃金は学歴によって異なりますが、女性の場合、「高専・短大卒」で1億7630万円、「高校卒」で1億4830万円、「中学卒」で1億3970万円で、すべての専業主婦が「1億円以上損をする」ことになります。「学歴が低いから働いても仕方ない」などということはありません。