官房長官は菅氏か岡田氏が有力

「鳩山内閣」の顔触れはどうなるのか。要役・官房長官には菅直人代表代行、岡田幹事長の両氏が有力候補だ。だが、2人は最近、小沢氏と関係がしっくりいっていない。挙党態勢を維持するため、2人の起用は回避される可能性もある。その場合は「消えた年金」問題で名を上げた長妻昭政調会長代理ら中堅議員が抜擢される可能性もある。地味だが党のマニフェストづくりを仕切ってきた直嶋正行政調会長も候補の一人だ。

官房副長官、首相補佐官らは小沢鋭仁、松野頼久、平野博文ら三氏の鳩山氏側近が名を連ねるだろう。松木謙公氏ら小沢氏側近が小沢氏との連絡役として官邸入りする可能性もある。

他の閣僚は、野党時代の活躍ぶりを考慮して人選することになる。例えば厚労相は長妻氏、耐震偽装事件の追及で鳴らした馬淵澄夫氏は国土交通相が適任か。前原誠司氏は外相か防衛相を希望するだろうが、彼のタカ派的政策は党内で突出しているので、反対論も出るだろう。

連立を組むことになる社民、国民新の両党からも1人ずつ入閣。自民党を離党した渡辺喜美氏が新党を結成、連立に加われば渡辺氏も行革担当などで閣内に入るだろう。民間人からも複数が起用される。片山善博前鳥取県知事、榊原英資元大蔵省財務官らの名が挙がっている。

「鳩山政権」が、自民党政権と最も違うのは官僚との距離だ。民主党政権では100人以上の政治家が、大臣、副大臣、政務官、補佐官などとして内閣に入る。今、各省庁内にある局、庁は約130だから、各省の局長とほぼ同数の政治家が霞が関ににらみを利かすことになる。法案化も政治家が行い、あらゆる記者会見から官僚を排除することさえ検討中だ。

省庁縦割りの行政を打破する仕掛けもつくる。このシンボルは首相官邸の「大部屋」だ。官邸のひと部屋を大臣用の部屋として改装し大臣たちが自由に出入りする。お付きの官僚のいない部屋で政治家だけの議論を深めるサロンとする。

内々に検討されている“隠し球”は省庁設置法の廃止。今、日本の省庁は、それぞれの設置法にもとづいているから、枠組みを変えるには法律を改正しなければならない。しかし、事前に設置法を廃止しておけば、自由に再編できる。麻生政権は先日、厚生労働省の分割を検討し、途中で断念したが、設置法を廃止してしまえば分割も統合も簡単だ。

このほか(1)大臣、副大臣、政務官の「政務三役」を機能させる、(2)事務次官会議の司会は従来の事務官房副長官から政務の副長官に変更する――などを検討。いずれも、政治の主導権を官僚から取り戻すのが狙いだ。

彼らが政治主導にこだわるのは16年前の苦い記憶が残っているからだ。民主党のベテラン、中堅議員の多くは93年、細川非自民連立政権に参加した。細川政権は、国民の人気は高かったが、政治改革以外は自民党政権を継承したため、官僚主導のシステムを崩せず短命に終わった。「細川政権の失敗は繰り返さない」が民主党の合言葉なのだ。