今回の震災に最も機敏に対応したのが日本銀行だった。国債買い取りなどの基金の5兆円増額と短期金融市場への流動性供給を即座に決定し、3月15日に発表。ところが、菅首相が悲壮な表情で会見を行ったことから株式市場はパニックに陥り、日経平均株価は先物市場で7800円まで下落する。

震災復興関連の注目銘柄
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震災復興関連の注目銘柄

急落によって先物取引で証拠金不足が生じ、それに伴う強制ロスカットが仕掛け花火のように投資家間で連鎖していったのだ。翌日には大反発に転じて9000円台まで回復したが、それは絶好のバーゲンセールと判断した外国人投資家から大量の買いが入ったから。加えて、日銀によるETF(指数連動型上場投資信託)の購入もあり、どうにか9700円台で年度末を迎えることができた。

しかしながら、新年度を迎えた後はこうしたPKO(株価維持政策)が見込めず、原発問題も長期化しそうだ。さらに持続的な上昇を期待できる状況ではなく、ジリ安の展開となる。

震災直後には、若築建設、大末建設など、中堅ゼネコンなどが復興関連と称して幅広く買われた。しかし、こうした災害直後の相場は、被害状況の詳細が明らかになるにつれて収束するのが習性だ。それよりも重視すべきは、原発事故を機に国のエネルギー政策が大きく変わる可能性について。原発に代わって、石炭よりも環境負荷の軽いLNG(液化天然ガス)を燃料とした火力発電へのシフトが顕著となるだろう。さらなるクリーンエネルギーとして、太陽光発電の開発も進む。また、放射能で汚染された土壌の浄化も避けられない課題だ。

これらの分野に関わる企業は、国策転換に伴うメリットを長く享受しうるわけだ。LNG関連ではトーヨーカネツ、明星工業、日揮など、太陽光発電関連ではトクヤマに注目している。東京の水道水から放射性物質が検出された際に人気化した栗田工業も、土壌浄化や水処理技術にも長けていて要注目だ。

(構成=大西洋平)