「調査により、どこのファンクションの社員が何に満足し、何に不満を抱いているのかや、職場の雰囲気などがわかります。自分のマネジャーは仕事の改善に役立つフィードバックをちゃんとくれているか、という具体的質問もあり、年に1回、通信簿のように赤裸々に評価されます。マネジャーはそれを見て、自分の組織を活性化するには何が必要なのかを考え、アクションプランを策定し、実行することが求められます」(吉田部長)

マネジャーをはじめとする役職者は、主役である最前線の社員が自ら創造性を発揮し、イノベーションを起こし続けることを支える黒衣として、重要な役割を担っている。

社員の活性化の仕組みとして、近年注力しているのがキャリアプランニングの支援である。その一つがグローバル規模の異動を可能にする社内公募制である。イントラネット上に世界中のポジションが明記され、一定の基準を満たしている社員なら誰でも応募ができる。他の外資系企業では珍しくない制度であるが、導入したのは同社の意識調査の結果だった。

「正直に申し上げると、業容が拡大し、人口爆発のような勢いで社員が急激に増加したこともあり、一人ひとりのキャリアを考える余裕がありませんでした。社員意識調査によると、世界から注目される会社に成長し、会社に対する満足度は高いが、自分の数年先のキャリアが描けないといった悩みを抱いている人も少なくない。そこで、社員が自らのキャリアを描き、領域を広げるために自ら手を挙げて異動できる仕組みを導入したのです」(吉田部長)

自分の気に入ったポジションに応募した人は、そのポジションを担当するリクルーターの面接を受けて合否が決定する。部下が合格した場合、マネジャーに異動時期の交渉権はあるが、拒否権はなく「相手のマネジャーが欲しいと言ったら、それで決まる」(吉田部長)仕組みである。制度導入以降、キャリアに対する満足度が改善し、加えてグローバルな流動化がかなりの規模で進んでいる。世界各地のオフィスの社員が“多国籍化”する日もそう遠くないという。