先頃、クリントン米国務長官が「尖閣諸島は日米安保の範囲内」とコメントしたことに、中国首脳の言動に辟易した多くの日本人が頼もしさを覚えたであろう。

<strong>Karel Van Wolflen</strong>●1941年、オランダ生まれ。同国高級紙記者として主に東アジアで活躍。数々の賞を得た後、フリーランスに。アムステルダム大学教授を同時に務める。『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』など著書多数。
K・V・ウォルフレンKarel Van Wolflen 1941年、オランダ生まれ。同国高級紙記者として主に東アジアで活躍。数々の賞を得た後、フリーランスに。アムステルダム大学教授を同時に務める。『日本/権力構造の謎』『人間を幸福にしない日本というシステム』など著書多数。

が、その肝心の米国が今、最悪の現実に向かって突き進んでいる――というのがウォルフレン氏の新著の骨子だ。

「オバマが大統領の座に就くことができたのは、あくまで過去の実績ではなく国民の期待によるもの。その実像はというと、経験・能力がともに不足していると言わざるをえない。残念ながら、就任は時期尚早でした」

「オバマは自分の力を過信していたようです。彼は非常に野心家で、かつ八方美人的。共和党・民主党の両方にいい顔をしようとします。それ以上に重要なのは、政治的な信念を持っていないこと。例えばルーズベルトやトルーマン、ケネディといった、過去の大統領には備わっていた一本筋の通った強い信念というものを、オバマの言動から感じ取ることはできません。レトリックは確かに素晴らしいが、何も信じてはいないのです」

そのオバマ氏も、就任直後であれば圧倒的な支持を背景に大鉈を振るうことができたはず、と氏は言う。しかし、その機会はすでに失われた。とりわけ2つの分野―金融・財政および軍事―においてブッシュ前政権が犯したあまりに酷い失政については、止めようとする努力すら怠った。

「改革どころか、金融マンの法外な報酬をさらに膨張させ、金融危機で膨大な血税を投じ、銀行の貸し渋りを呼んだ。さらに、どう見ても脅威にはなりえない国々との戦争を、イラン、アフガニスタンからパキスタン、イエメンという具合に、止めるどころか拡大していきました。将来はイランを攻撃すると誰もが思っています」

今となっては、もう手遅れだ。「米国中枢の諸機関はもはやコントロール不能。1930~40年代のファシズムのような体制が出現する危険性があります」との指摘は衝撃的である。

本書ではほぼ全編にわたって、こうしたオバマ政権の機能不全ぶりとそこに陥るまでの経緯を、“コーポラティズム”“画策者なき陰謀”といった独自の概念を提示しつつ克明に分析している。

過去、日本に関する著作がベストセラーとなった氏は、「ワシントンは日本が独自の対中戦略を持つことを嫌い、米国の保護統治国であることを望んでいる。日本人はそれを理解すべき」と断じる。巨大な厄介者と化したこの“親分”に、それでもついていくしかないのか?