よくTVの時代劇を見ていると、絵に描いたような悪代官が、町娘にお酌を強要するシーンが出てくる。

すると突然、襖がガラリとあき、隣の部屋には布団と高枕が2つ。すかさず悪代官は、

「わしに逆らうと、どうなるかわかっておろうな」

と女性に手を伸ばし――。

この時代劇の超定番パターン、面白いことに「権力」の在り様を見事に描き出しているのだ。

まず悪代官は、権力を使って女性を意のままにしようとする。これは実は権力の定義そのもの。つまり、「他人を思うように操る力」こそ権力の意味なのだ。

しかしなぜ権力は、人を思うように操る力になり得るのだろう。そのポイントとなるのが、

「わしに逆らうと、どうなるかわかっておろうな」

というセリフ。相手が、「こうされたくないなあ」という急所を握っているからこそ、力が揮ふるえるわけだ。時代劇でいえば、

「父親を死刑にしちゃうぞ」
 「お前の家を破産させるぞ」

といった脅し文句が一般的に使われるが、古今東西の歴史を通してみてもこれは同じこと。権力の源泉とは、

1、武力、懲罰権
 2、金

の2つが定番中の定番になる。

「殺しちゃうぞ」「金が欲しいだろ/金あげないぞ」が、人には最も効く脅し文句なのだ。