次期国家主席候補の習近平氏(中央)を巡る、政治闘争も背景にあるといわれる。(PANA=写真)
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次期国家主席候補の習近平氏(中央)を巡る、政治闘争も背景にあるといわれる。(PANA=写真)

こういった状況から、IT、家電、自動車など、中国国内に市場があり、日本の技術が現地に集積されている産業はともかく、「アパレルや靴などは、生産を中国からベトナム、タイ、カンボジア、さらにパキスタン等に移転するところが散見される」(横田所長)と言う。

では、新興国にリスクはないのか。あっても中国リスクよりましなのか。

「政治リスクという点においては、やはり中国ほどではない」とJETRO海外調査部アジア大州課の伊藤博敏氏。ただ、オペレーションや実務に伴うリスクは中国やASEAN諸国以上に大きい、という。

インドは中国の次に大きな市場として2006年以降、日本企業の進出が目立ち、チャイナ・プラス・ワンの候補地として注目を集めているが、カースト制度やイスラム教徒とヒンドゥー教徒の関係など身分制度的、宗教的問題に対する理解や受け入れ態勢がないと、トラブルに見舞われることになる。

またインドにおける企業進出の二大障壁といわれるのは「インドの税務の煩雑さとインフラの未整備」と伊藤氏は指摘する。「税控除、還付のしくみなど複雑を極め、トータルコストの試算が難しい。また、国内の交通インフラ未整備のため運輸リスクも高い。コンテナの6割を受け入れているムンバイから消費地・デリーまで1500キロで1週間前後の日程がかかる。電気インフラも中国・ASEAN地域に比べると弱く、工場を24時間フル稼働させようと思えば自家発電しかなく、設備費、燃料費が予想以上にかかる」。

さらに「民主主義国家」ゆえの困難さがあるともいう。中国は憲法で保障された権利よりも、共産党組織の決定が優先される独裁体制ならではの困難があるが、逆に地元共産党組織とのコネ、パイプがあれば、優遇されることも煩雑な手続きを避けることもできる。

しかし、インドの場合、トップの決定より民主的手続きが重視され、プロジェクトも用地の所有者が抵抗すればとん挫する。「インドを経験した後、中国に行った人は、外資企業の受け入れ態勢や決断の迅速さなど仕事のやりやすさにびっくりするという人も多い」と伊藤氏は言う。

新興国のオペレーションリスクと中国の政治リスク、どちらが対処しやすいのかは一概には言えないだろう。

JETRO広報課の高島大浩課長は「タイで生産した部品を中国に輸出し、それがEUに輸出されるといったグローバルサプライチェーンの時代では、中国がダメだからインドやベトナムへ、と単純にはいかない」と言う。

ただ、実務上の煩雑さやインフラ未整備などは時間とともに徐々に改善に向かう。中国の政治リスクについてはどうなのか。清華大学・野村総研中国研究センターの松野豊・副センター長は「中国は今、国家原則と経済大国化の矛盾に直面している。国家原則だけで外交・政治をするには中国経済は大きくなりすぎた。中国自身が産業活動の統計や情報を十分に公開していないため、研究者・専門家たちが自国の経済状況をきちんと把握できていない状況がある」と説明する。中国という国の矛盾が解消しない限り、政治リスクは軽減されないわけだ。

中国畑を歩いてきた日系企業関係者は「チャイナリスクに対応するには、もはや民間の力では限界がある」と訴える。日本が政治主導でチャイナリスク対策をリードしなければいけない時代になってきたのではないか。