「社内制度としても置かれないし、労使間の個別の合意での買い取りも行われていないと思う。なぜなら『社員が心身を休めるための有休を、お金に換える』ことを認める会社だという、誤ったメッセージを伝えてしまうおそれがあるからだ」(同)

しかし、「辞めるときに未消化有休の日数分だけ退職日をずらして、その退職日まで有休を消化し続けるという形を採るならば、事実上会社に有休を買い取ってもらっているのと変わらない」(同)。

仮に、日給1万円の社員が10日ぶんの有休を余らせたまま、ある月の20日に退職するならば、その退職日に買い取りを求めて、退職金上乗せなどの形で10万円を受け取るのと、退職日を同月30日にずらし、21日から有休を使い切って10万円を給与として受け取り、そのまま退職するのとでは、結果的に同じことである。だとしたら、会社は有休買い取りの回避を選択して、後者の方針に応じるはずだと金崎弁護士は説明する。

また、時効で消滅した有休の買い取り請求も「実際はたぶん通らないだろう」と手厳しい。

「有休は計画的に取得していくよう、自分で調整すべき話だから。有休申請のタイミングによっては会社の業務に支障が生じるため、有休を別の機会に取得するよう会社が求めること(時季変更権の行使)は正当。それで有休が消えるなら、計画的に消化していかなかった本人が悪いんでしょ、という話」(同)

有休を取得しやすいかどうかは、法律の内容よりも、各社の「社風」という得体の知れないものに大きく左右される。金崎弁護士は「そういう空気は気にせずに有休を取るしか方法はない」と語る。