毎朝読む新聞から何を得るか。仕事で結果を残す人は、「読み方」「ビジュアル化」に独自のメソッドがあった──。『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力』の著者が、情報を仕事のアイデアへ繋げる図解術を指南する。

日経新聞に毎朝、目を通すこと――。もはや、それはビジネスマンのノルマであり、理論武装の手段でもあります。職場の上司・同僚とも、顧客とも、日経の記事を介して仕事の話や雑談をする。情報交換もする。しかし、そのレベルで終わっては、購読料の対価を半分も得られないでしょう。

私もかつてはそうでした。きっかけは、リクルートに在籍していたころ、ある経営者に言われた「何のために日経を読んでいるのか」という言葉。それ以来、私は人に会うたびに、日経の読み方を尋ねるようになりました。そこで、仕事上で結果を残す人とそうでない人は、同じ情報から何を読み取るかという力に、明らかな差があることに気づきました。

第一に、結果を残す人は、目的意識が明確です。自社のビジネスに応用することは可能か。そのことを常に念頭に置き、記事を読み取っている。記事を利用して儲けに繋げようとする貪欲さを持っています。

2つ目は、「読み込む記事」が違う。多くの人は、一面や総合面、経済面などのマクロ経済が中心に書かれているところを熱心に読み、そこまでで疲れてしまう。でも、この面を読んでいても、あまり頭に入ってこない。直接的に仕事に役立つことも少ないのです。

できるビジネスマンは、この部分をさっと流し読みしています。その代わり、熱心に読むのは企業面と消費面。企業の動向や新製品情報は、たとえ短い記事でも、ビジネスアイデアの宝庫。彼らはここを深読みしているのです。

3つ目は、読み方の「視点」。経営者に新聞の読み方をヒアリングした結果、彼らは読み方のフレームワークを持っていたのです。新聞記事は5W1Hで書かれていますが、それを「3W1H」という軸で読み取っています。つまり、「誰が」(Who)、「誰に」(Whom)、「何を」(What)、「いくらで」(How much)ということに注目している。

例えば、A社が新商品Bを提供するという記事があったとします。すると、彼らは、「この記事には“誰に”“いくらで”という要素が欠けている」ということに気づきます。マーケティング用語でいうターゲティングとプライシングに当たります。そして彼らは考え、想像する。ときに直接その企業に問い合わせ、どのようなビジネスモデルになっているかを突き止める。

日経はいわば、多種多用なビジネスモデルの実例集。彼らはビジネスのパターンを頭に入れ、商売のタネを常に模索しているのです。