およそ6割が定年後も働く

図12:6割弱が65歳以降も働きたい<br>
図13:定年後も同じ企業で働きたい人が多数派
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図12:6割弱が65歳以降も働きたい
図13:定年後も同じ企業で働きたい人が多数派

07年から始まった団塊世代の大量退職時代も3年目を迎える。定年後も何らかのかたちで仕事を続ける団塊世代は多いが、ビジネスマンは、何歳まで働きたいと考えているのだろうか。

調査の結果、「60歳より早くリタイア」(12.7%)、「60歳でリタイア」(14.4%)という早期リタイア志向もそれなりにいるが、「65~66歳まで」(20.4%)という人が最も多く、「生涯現役」(18.0%)も多かった(図12)。全体でみると、およそ6割が「65歳以降も現役希望」だ。

では、定年後にどのような働き方を望んでいるのか。

「定年延長、廃止の制度を利用する」(11.1%)、「雇用延長を希望する」(20.2%)、「再雇用を希望する」(16.0%)を合わせて47.3%が「定年後も同じ企業で働きたい」と考えている(図13)。一方で「独立する」と答えた人はわずか9.4%にとどまった。

半農・半サラリーマン

冒頭でも触れたが、今回のアンケート調査は金融危機を引き金にした世界的な景気後退の波の大きさ、加速度的なスピードがさまざまな形で明らかになる前に実施された。それでも集計結果からは、来年以降に向けた強い先行き不安と危機感、変革を求める意識が垣間見える。国の政治経済でも、会社でも暮らしでも、“生き残り”を考えているという印象は予想よりはるかに強かった。

経済活性化や地域振興策で「農業」がキーワードに上がってきたのも強い危機感の表れだと思う。自動車やエレクトロニクスほど裾野の広い産業はないが、それにおんぶに抱っこをしていたら一蓮托生で日本全体がダメになる。デトロイトの二の舞いだ。

地域振興にしても、東京に一極集中して牽引してもらっていては、東京が店長で地方が店員のような関係しかつくれない。東京とは違う何か、東京ではできないことで年収300万円稼げる雇用をつくり出すか、300万円稼げる人に地方に来てもらうという発想が必要だろう。

経済情勢が悪くなれば、地方での暮らしやすさもアピールしやすい。田舎暮らしで仕事のベースはインターネット。月に何度か東京に出る――。景気後退を逆手に取れば、ネットを使ったテレワーク型の社会に転換できるという気もする。

個人の生き残り策としても、兼業サラリーマンや半農・半サラリーマン志向が増えるかもしれない。週末は農家に借りた畑で自分たちが食べる分をつくるサラリーマンは結構いる。自治体が貸し出す家庭菜園用の農地は大人気で、管理費の安いところは順番待ちの状態だ。休耕田を活用すれば農地はもっと増える。国が奨励して、ビジネス感覚を持った人が農業に携わるようになれば、新しいビジネスの芽も出てくるに違いない。

長期化が予測される今回の不況下で、日本人の価値観の溶解がさらに進行するのか、それとも新しい価値観の構築に向かうのか、注視していきたい。

【アンケートの概要とお礼】2008年10月27日~11月1日に、PRESIDENT定期読者7万人に対して郵送による質問紙調査を実施、4595人より回答を得た。ご協力くださった皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。(プレジデント編集部)
(小川 剛=構成 宇佐見利明、本田 匡=撮影)