見上げてごらん 夜の星を

08年にビール事業が黒字化して以来、サントリーの勢いはとどまるところがなかった。

「ザ・プレミアム・モルツ」は7年連続過去最高の売上数量を更新し、「金麦」も新ジャンルにおいて順調にシェアを伸ばし続けている。死角はないはずだったが……。

<strong>サントリー酒類常務取締役ビール事業部長 寺永好孝氏</strong>。ハイボール、ほろよいなど、酒類全般でのサントリーの躍進が目立った。2011年、さらなる飛躍を画策する。
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サントリー酒類常務取締役ビール事業部長 寺永好孝氏。ハイボール、ほろよいなど、酒類全般でのサントリーの躍進が目立った。2011年、さらなる飛躍を画策する。

「他社さんの工場が被災して大きく報道されましたが、じつはうちも利根川ビール工場が大きな被害を受けました。しかも3月28日まで続いた東電の計画停電の管内に利根川と府中の武蔵野ビール工場が入ってしまった」

酵母というデリケートな生き物を使って造るビールは、停電のアナウンスがあると、翌日の生産はやめざるをえない。利根川は3月のあいだじゅうまったく製造がストップした。府中も結果として停電はなかったものの、生産計画は大きく狂ってしまった。

「我々は全国にビール工場が4つしかありません。そのうちの首都圏の2つの工場が止まってしまい、半分以上の供給能力を失ってしまいました。ビールは仕込んでから販売まで1カ月はかかりますので、4月下旬まで商品が欠品を起こしてしまったというのが事実です」

サントリー酒類常務取締役ビール事業部長の寺永好孝は、苦しかった時期を正直に吐露する。

影響はそれだけにとどまらなかった。缶蓋(ぶた)を製造する会社が被災し、パッケージの供給不足が深刻になった。サントリーのビール類の特徴となっている「金蓋」がすべての缶に手当てできず、「銀蓋」が交じってしまうことになった。

「苦渋の決断でした。できるだけザ・プレミアム・モルツは銀蓋にしないように、ということで、結局は出さずに済んだのですが」