致命的に欠けている「滞在する」という発想

それだけ大きな産業ゆえに競争も激しいわけで、ITやWebと同様に世界の観光業は着実に進化している。ところが日本の場合、日本人観光客が世界で大歓迎された時期に外に出ていくことばかり一生懸命になって、外国人観光客を受け入れて満足させるような観光のイノベーションに知恵もお金もかけてこなかった。

だからどこの観光地に行っても、30~40年前のコンセプトと寸分違わない。支笏湖に行っても、箱根に行っても、指宿に行っても、チープな看板や土産物店など寂れた観光施設ばかり。発展途上国・日本のままなのである。

だいたい日本の観光旅行の基本パッケージは、いつまで経っても「1泊2食付き」が原則だが、日本の旅館に泊まる外国人が1番困るのはこれだ。欧米では朝食が部屋代に付いているぐらいで、夜の食事まで縛られることはない。彼らはディナーを大事にしているから、宿泊施設近辺の美味しいレストランをしゃかりきになって調べる。そこでゆっくりディナーを楽しんで、夜もふけてからホテルに戻ってくる。それなのに旅館で、しかも半ば強制的に夕方6時、7時に食事を取らされるのだから迷惑千万のサービスとなる。

朝も9時までに朝食を済ませなければならないし、隣の部屋ではバキュームクリーナーでガーガー掃除を始めるから、ゆっくり寝ていられない。違和感だらけの1泊2食付きなのだ。もちろん食事も毎日同じだから“滞在型”などには対応できない。

観光立国して世界から旅行客を呼び込もうとするなら、きちんと顧客ターゲットを見定めて、競争分析をして、自分の戦略を立てなければならない。