公的年金の財政が厳しい昨今、厚生労働省は企業年金減額には慎重で、NTTのように加入者と労組の同意が得られても減額が認められなかった例もある。

「とはいえ、会社が倒産してなくなってしまったら、企業年金もゼロになるのではないか?」と心配する人も多いだろう。

しかし、企業年金は、会社の資金とは別枠で積み立てられ、運用されている。経営がいくら厳しくても積立金に手をつけることはできない。会社が倒産してなくなったときは、積立金を加入者全員で分けることになる。

企業年金が抱える最大の問題は、むしろこの積立金が不足している点だ。確定給付型の企業年金の場合、給付利率は各社の規約で定められている。日本航空の場合は年4.5%だったが、5%以上といったところも少なくない。現在、これだけの給付利率に見合った運用はほぼ不可能。不足額は会社で補填しなくてはならず、この経費が経営を圧迫するのだ。

2000年前後、当時の厚生年金基金と税制適格年金に積立金不足の問題が表面化し、02年に新たに確定給付企業年金制度がつくられた。新制度では積み立て基準が厳しくなり、積立金不足は起きにくくなっている。

新制度創設に伴い、税制適格年金は12年に廃止されるが、なかには積立金ゼロの企業も存在するようだ。こうした会社が倒産すると、企業年金はまったく受け取れなくなる可能性がある。

これらの認可制の企業年金制度以外にも、企業独自で年金制度を設けているところもある。規定はあるものの、企業年金と比べ法的な保護は少ない。

また、転職したときは、確定給付型の企業年金の場合、一時金を受け取って年金受給権がなくなるのが一般的だ。ただし、厚生年金基金については企業年金連合会に移換されていることもある。転職経験のある人は確認のうえ、年金受給年齢になったら忘れずに申請しよう。

まず、自社がどの制度に加入しているのか知っておくことだ。この機会に退職金規定などを調べておいてはどうだろうか。

(構成=有山典子)