前回で触れたテレビドラマ「華麗なる一族」だが、いろいろな人たちと話していると、奥さんは先に寝てしまい、ビジネスマンのご主人が食い入るように見ていたという家庭が多い。合併、資金調達、融資などの話はビジネスマンでないと抵抗感があるのかもしれない。

そして、前回はROA(総資産利益率)を用いながら、いかに効率よく資産を活用して利益を上げることが大切かを解説した(http://president.jp/articles/-/3889)。実は「資産をいかによくするか」が、私の財務戦略の根幹をなしている。会計のプロから見た最近の面白い話題に入る前に、私がこれまでの経験から得た財務分析上の原理を紹介しておきたい。

(1)翌年に得られる利益の額は「資産の質」に例外なく依存する。
(2)資産には「維持管理コスト」が必要。
(3)資産は「収益を生むよい資産」と「収益を生まない悪い資産」に分かれる。
(4)継続的に努力して整理し続けないと、「維持管理コスト」ばかりかさんで、「収益を生まない資産」が増殖していく。

特に注意したいものが(4)について。建物、機械など有形の資産だけでなく、「のれん(ノウハウ)」のような無形の経営資源(=資産)であっても、それを維持して、さらに他社に対する優位性を保つためにはコストがかかるのだ。

たとえば、「他社よりも優れたサービス体制」というノウハウを提供し続けるのには、「市場の要求にマッチしたサービス・マニュアルの作成と継続的な見直し」「優秀な従業員の確保」「新人の教育訓練と熟練者の継続的な研修」などが必要になる。つまり、バランスシート(貸借対照表)の左側(=資産)の質を維持するためには、多大なコストがかかるのだ。

その資産を調達したり、維持する資金の源を示すのが右側(=負債・資本)で、最後の拠り所となるのが下の部分の「自己資本」だ。そして、これがいかに大切かを教えてくれるのが、大手電機メーカーのS社。2年前に1700億円の最終赤字を記録して再建に乗り出したものの、一向に好転の兆しが見えず、3期連続の最終赤字がほぼ確定している。先頃、女性の会長が辞任して話題にもなった。