しかも、「トヨタの露骨な比較広告に、ホンダからクレームが入った。トヨタは、比較広告のパンフを撤去するとホンダに約束した。が、多くの販売現場では、トヨタの要請を無視して、パンフのすべてを客に渡してしまう。リコール騒動以前に、現場はすでに混乱していた」と営業マン。HVをめぐる、トヨタとホンダの消耗戦に巻き込まれなかったのは大きかった。だが、本質は中国での販売好調だ。

「中国のパートナーが、武漢に本社を持ち、内陸部の販売網が強い東風汽車なのが、日産の勝因。特に小型車のティーダが売れている」と井上教授は語る。

日産の中国での09年度販売台数は、前年度比約53%増の約85万4000台。台数、伸び率とも、日本企業ではトップだ。同地域での営業利益は600億円を超すと見られている。

中国内陸部には8億人の農民がいる。中国政府は農村部の自動車の普及政策である「汽車下郷」を、家電の普及政策である「家電下郷」、農業機械の普及政策である「農機下郷」とともに実施。これらは、農民の生活向上と内需拡大が目的である。

汽車下郷とは、買い替えの際の補助金政策のことで、さらに1600cc以下の乗用車では取得税引き下げの優遇処置も実施したのだ。内陸部に販売拠点があり、小型車に強い日産が“数字”を獲得したのだ。

日産は今秋「フーガHV」を、さらに電気自動車(EV)「リーフ」を米日欧で発売していく。プリウスやインサイトに搭載されている電池が旧世代のニッケル水素電池なのに対し、フーガHVやリーフには、小型で高容量の新世代リチウムイオン電池が搭載される。リチウムイオン電池は、NECと共同開発したマンガン正極のラミネート型だ。日産・NECはラミネート型電池のデファクト化を狙っている。ダイムラーを取り込みデファクト化を進める一方、ルノー・日産の最終のターゲットは、中国市場となる。

HV、EVの電動車時代に突入して、エンジンは電池へと替わっていく。今後3~5年においての電動車の数字は、いまのガソリン車とは次元の異なる重さを持つ。