<strong>細谷 功</strong>●ザカティーコンサルティングディレクター<br>1964年生まれ。東京大学工学部卒業。東芝でエンジニアとして働いた後、アーンスト&ヤング・コンサルティングに入社。専門は業務プロセス改革、組織改革など。著書に『地頭力を鍛える』などがある。
細谷 功●ザカティーコンサルティングディレクター
1964年生まれ。東京大学工学部卒業。東芝でエンジニアとして働いた後、アーンスト&ヤング・コンサルティングに入社。専門は業務プロセス改革、組織改革など。著書に『地頭力を鍛える』などがある。

限られた情報、限られた時間で推定するのだから、答えはアバウトなものでいい。数字の桁数が合っていれば、推定の精度としてはかなり「いい線」である。

私たちコンサルタントも含めて実は専門分野ほどその場で答えを出せないものだ。ところが、ビジネスではしばしば質よりスピードが優先される。何の“当たり”も付けないで詳細の分析や実現性の検討を始めるのと、はじめに数字の桁数などの当たりを付けて行うのとでは、その後の作業効率が格段に違ってくる。

「見当がつかない」「情報が足りない」と立ち止まったら、そこから先には進めない。何らかの推定ロジックを考えて一度ざっくりとした答えを出してみる。するとそのプロセスのなかで不確実性の高い要素は何か、一番いい加減なところはどこか、といったいわゆる「(精度の)ボトルネック」の部分が見えてくる。

ボトルネックがわかれば、そこから優先的にチェックすればよい。一度全体の答え(仮説)をつくって、怪しいところから精度を高めてゆくのがスピードアップのコツなのだ。

複数のアイデアを手早くスクリーニングするときにもフェルミ推定による概算は有用だ。たとえばコストダウン施策が多数挙がったなら、まずそれぞれにかかる投資額と効果をざっくり算出する。

私たちが会議やブレーンストーミングの最後によくやるのは企画やアイデアのふるい分けである。30の企画が出たのなら、それぞれの投資対効果を概算し、採用10、却下10、要検討10というようにスクリーニングする。それによってどんな企画を持ち帰るのか意識付けがなされ、次にやるべきことが明確になる。

フェルミ推定の活用場面はそればかりではない。たとえば営業先で、取引件数など顧客の情報を聞き出して即興で概算し、自社製品の投資対効果をアピールする。それが話のきっかけにも、インタビューシートにもなるのだ。

今回はフェルミ推定を使った概算テクニックの活用法に絞って話をしてきたが、これは初歩にすぎない。「問題解決の縮図」であるフェルミ推定の応用範囲はもっと広い。実践を通じてフェルミ推定のプロセスを成している仮説思考やフレームワーク思考、抽象化思考などの基本動作を習得し、ビジネスや身の回りの問題解決につなげてほしい。