消費増税対策として国が還元策を打ち出している「キャッシュレス決済」。だがそれは浪費の元凶ともなりうる。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「51歳の独身男性で、月の支出が約43万円、毎月約6万も赤字というケースがあったが、これもキャッシュレス決済が隠れ浪費の元凶になっていた。使い方には注意すべきだ」という——。
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「マンション売って老後資金を」独身50男の大誤算

「2年前の人事異動で役職からはなれて収入が大きく減ってしまい……しかも所有している不動産物件の価格も落ち始め、急に老後のことが心配になったのです」

吉原健太郎さん(仮名・51歳・独身)は不動産会社の支店長を務めていましたが、会社が業績不振により他社に吸収合併され、一般社員へ降格になってしまったのです。

そのため、手取り収入は10万円ほど減ってしまい、毎月赤字が続いています。ボーナスも約3割減ってしまったため、赤字補塡ほてんに使うとそのほかの支払いができなくなり、預貯金を崩して暮らすという悪循環になっています。

ボーナスの使い道は、住宅ローンのボーナス返済や固定資産税などです。これらでボーナスのほとんどがなくなる金額になります。

大学卒業してからずっと不動産業界に勤めている吉原さんは、将来的に資産価値が上がると読んだ物件を、将来的に売れば何かの資金になると考えて購入し、住んでいます。40歳を過ぎた頃から、「このまま一生独身かもしれない」と考え始め、この物件を売って老後資金にすればいいだろうと思っていました。そのため、毎月の収支やボーナスからの預貯金ができなくても、あまり問題だと感じていませんでした。

ところが、最近この物件の評価額が落ち始めて、予定通りの額で売れない可能性が見えてきました。

そのような中、貯蓄残高を確認してみると約200万円。毎月、生活費の補塡をするため少しずつ減っています。現在、51歳。あと10年で定年というところで、大きな不安を抱えこんでしまいました。