ここ20年で日本からはGAFAが生まれなかった

【田原】海外展開はどうですか?

【南場】人気のゲームタイトルは、世界で何億人もユーザーがいます。ただ、1度海外進出で失敗しているんです。米国企業を買収して大展開しようとしましたがうまくいかなかった。いま大きな支社は上海だけです。

【田原】どうして失敗したの?

【南場】これも買収後のマネジメントが原因ですね。買収先の経営陣と本当にワンチームになれるかというところが難しくて。逆に上海の支社がうまくいっているのは、日本と中国をよく理解した人材がトップにいて、いい体制を築けたからです。

【田原】トランプは、下手に中国に行くと知的財産をぜんぶ盗まれると言っていますね。そのへんはどうですか。

【南場】私たちのやっているゲームも違法コピーされているし、中国は人材の流動性が高く、わが社の社員が退職後にわが社の手法で事業をやるケースもあります。でも、目くじら立ててもしょうがない。そもそも私たちの強さの源泉は、どんどん進化していく力。だからいまあるものを盗まれても怖くないですね。

【田原】19年夏、南場さんは100億円規模のファンド「デライト・ベンチャーズ」を組成しました。なんでいま始められたんですか?

【南場】創業して20年が経ちます。その間米国のGAFAは急拡大しましたが、日本からはその規模の会社が出てこなかった。そんな会社を支援したいと思っています。DeNAはこれまで数多くの新規事業をスピンアウトさせてきました。その取り組みを加速させて、社内外で起業家を輩出する枠組みとしてファンドをつくりました。

【田原】そういえば、この連載でもDeNA出身の起業家に何人か会いました。優秀な人材が外に出ていくのはマイナスじゃないんですか。

【南場】全然マイナスじゃないです。流動的な社会が私の理想。自分たちだけでやる時代はもう終わりで、次はもっと内外で緩やかにつながり合って、世の中に届けるデライトの総和を最大化していく時代になると思います。出ていった人とも緩やかなつながりで応援し合っているうちに、DeNAの表面積も拡大していく。むしろメリットが大きいです。

【田原】なるほど。DeNAはマッキンゼーに似てるね。マッキンゼーで働いたことはキャリアになるけど、DeNAもそう。日本のマッキンゼーだ。

【南場】DeNA出身者といったら、もう入れ食い。アドバイスをするのと自分でやる人は違うので、マッキンゼーは超えていると言いたいですね(笑)。

(構成=村上 敬 撮影=枦木 功)
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