日本各地で透けて見えるIR利権

2019年8月22日、横浜市の林文子市長がカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を正式表明した。林市長は「持続的発展には必要」とIR誘致に前向きだったが、2年前の市長選では「IRは白紙」としていた。ここへ来て誘致参戦を明確にした理由について、人口や税収の減少による厳しい財政状況を挙げている。世界的に見てIRの経済効果は薄れてきているので、これはとってつけたような詭弁であり、真実は外交や政治の藪の中、ということだろう。

アメリカ軍が今も占領する港湾施設「ノースピア(横浜ノース・ドック)」。(時事通信フォト=写真)

候補地は観光スポットの山下公園に隣接する47ヘクタールの山下埠頭。現在は港湾事業者の倉庫などが並んでいるエリアだが、2020年代後半の開業を目指すという。

トランプ氏が大統領選に勝利した16年11月にニューヨークを訪問した安倍晋三首相が帰国するなり急遽成立させたのがIR整備推進法案、通称「カジノ法案」だ。その背景にはトランプの最大支援者の1人と言われるラスベガス・サンズなどを経営するシェルドン・アデルソンの影響があると言われてきた。つまり国内のパチンコ利権と対立する海外のカジノ利権を前提とした外交・政治の闇の中で日本の地方自治体が踊っている構図が横浜でも透けて見える。