ある企業幹部が、不倫相手の部下と、社内の裏事情まで何でも話せる関係にあった。しかし、いざ、男が別れ話を切り出したとき、恨みに思った女が、男の不祥事を監督官庁やマスコミなどに漏らす。実はこれは、企業の不祥事が外部に漏れるケースの一例だ。このほか、入社したばかり、あるいは退社を控えた社員や、派遣社員、期間社員は、心理的に会社と一定の距離があり、また会社からの報復を比較的恐れないため、内部告発者となることが多い。

通報の対象となる、企業のおもな法令違反行為
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通報の対象となる、企業のおもな法令違反行為

こういった「内部告発予備軍」は、偽装事件にも見られるように、会社に瀕死のダメージを与えかねない。一方、社内の「内部通報窓口」などで情報を吸い上げて対処すれば、会社を救う存在ともなりうる。つまりは「毒にも薬にもなりうる」存在だ。では、彼らを外部でなく、内部通報窓口へ誘導し、「薬」にするために、企業は何をすべきなのだろうか。

2006年に、「公益通報者保護法」が施行された。企業が、不祥事を告発した従業員を解雇したり、窓際部署に追いやったりの不利益措置で報復させないようにする法律だ。報復を理由とした解雇などは無効と定めた。

しかし、「実質的には、法律施行前と特に変わっていない」(浅見隆行弁護士)。法律が施行される前から、従来の労働法制に基づき、内部告発に対する報復としての不利益処分を無効とする判例はあった。また、人事権を企業が握っている以上、報復措置と通常の昇進・異動を明確に区別するのは難しいという状況も変わっていない。加えて、内部通報窓口についても、経団連が02年から各企業に向けて呼びかけ、すでに設置が進んでいたからだ。

では何が変わったのか。浅見氏は、「法律に明文化されたことで、不正を告発する側は報復されない安心感が持てるようになった」と、同法の「宣伝効果」を指摘する。つまり、内部告発が行われる可能性が高まっているのだ。

内部告発者の立場で考えてみよう。通報先として考えられるのは、監督官庁、マスコミ、そして社内の3つだ。