労災認定をめぐる訴訟に勝つためには、何よりも自殺と仕事の因果関係を明らかにする必要がある。川人弁護士は、次の3つのポイントをあげる。

まず、うつ病などの精神疾患であったか否か。医師の診断を受けていれば問題はない。が、通院の事実がなく、いきなり自殺にいたるケースも全体の約7割にのぼる。そうした場合は、故人の遺した日記やメモ、同居者が見聞した言動などから心理学的に類推し、立証していく。

2つ目は、うつ病の原因が業務や職場にあったのかどうか。先の例でいえば、睡眠もとれないような宿直が増加したとか、パワハラに当たる暴言が繰り返されたことを証明する。

そして3つ目が、業務や職場以外でうつ病の原因となる大きな悩みがなかったかどうか。夫婦関係や子育て、親の介護など家庭の事情や失恋などである。

「最近の過労やパワハラ自殺では、その引き金となる過度の疲労やストレスを招く原因として、会社側の労務管理に過失ありとされる場合がほとんど。その点、裁判所は比較的きちっと裁定をしますので、労災認定に持ち込める可能性は高いといえます」(川人弁護士)

とはいえ、自殺に追い込まれてしまっては元も子もない。もし「安眠できない」とか「出社が辛い」といった徴候を感じたら、すぐさま誰かに相談すべきだ。しかし、上司や同僚では社内の利害関係が絡むこともあるので難しい。友人も励ましてはくれるだろうが、本質的な解決策は持ち合わせていない。

「まずはメンタルヘルスの専門家に診てもらうことです。産業医でもいいし、NPOなどが運営している電話相談でもいい。普段から、いい意味で仕事と距離を置くことも大事です」(川人弁護士)

(ライヴ・アート=図版作成)