1998年に3万人を突破した日本の自殺者数は、その後も3万人台を割ることなく高止まりしている(警察庁調べ・図参照)。だが厚生労働省は、これまで、これら自殺を労働災害(労災)に認定することには消極的だった。

1998年から激増した!日本の自殺者数
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1998年から激増した!日本の自殺者数

それがここにきて、司法判断において変化が出始めている。2007年3月には過重労働による小児科医の自殺が、10月にはパワーハラスメント(パワハラ)による医薬品販売会社社員の自殺が、ともに東京地裁で業務上の死と判断され、労災認定されたのである。

過重労働での労災認定は、東京都内の私立病院に勤務していた医師の事例。この医師は99年1月に小児科部長代行に就任したものの、病院の経営効率化に伴い同僚医師2人が退職。補充がされなかったこともあり、3月には宿直が8日となり、休日はたったの2日に。こうした苛酷な勤務が続き、管理職という立場上からの強いストレスもかかり、同年8月に自殺。44歳という働き盛りだった。

一方、パワハラ自殺のケースは、静岡県でMR(医療情報担当者)の仕事をしていた男性。「おまえは会社を食い物にしている」「給料泥棒」「居るだけでみんなが迷惑している。お願いだから消えてくれ」など、上司から繰り返される暴言に耐えきれず、03年3月に命を絶った。まだ35歳という若さだった。

いずれも仕事にからむ肉体的、精神的な重圧が原因でうつ病を発症しての悲劇だった。ところが労働基準監督署は、労災とは認定しなかった。そこで遺族たちが判断取り消しの訴訟を起こしたわけだ。

過労死弁護団全国連絡会議幹事長で、両訴訟の原告代理人を務めた川人博弁護士は、こう説明する。

「99年に労働省(現・厚生労働省)が、精神障害や自殺の労災認定基準を緩和。それに伴い、これまでは諦めていた遺族が労災補償を求める動きが全国的に広がり、現時点(07年12月7日)では精神疾患で50件、脳心臓疾患を含めると100件程度の案件が係争中です。この1年の裁判を振り返ると、遺族側が勝訴し、国は控訴しないという傾向にあります」