沖縄県で最大の歓楽街・松山。多くの飲食店がひしめくなか、大小さまざまなキャバクラ店も軒を連ねる。オーナーたちはどんな経緯から店を持ち、どのようにして店を切り盛りしているのか。キャバクラを営むオーナーの1人に、お金にまつわる事情を聞いた――。
沖縄県那覇市にある県最大の歓楽街・松山
撮影=上原 由佳子
沖縄県那覇市にある県最大の歓楽街・松山

“中箱”の経営で年収1300万円

「年収は2000万あるよ。キャバクラだけで1300万くらい。残りは昼職だよ」

そう話すのは、沖縄一の歓楽街・松山でキャバクラを経営する仲村(30、仮名)だ。開店に仲村が用意した資金は300万円。2人で経営しているので、開店の初期費用は合計600万円で済んだことになる。仲村は「初期費用は2、3カ月で回収できたかな」と話す。

キャバクラの世界では、女性従業員の人数に応じて、店のサイズを「大箱(おおばこ)」「中箱(ちゅうばこ)」「小箱(こばこ)」と呼ぶ。ちなみに、仲村の店は中箱だ。松山ではこの規模が最も多く、その分競争も激しい。

中箱の経営に失敗してきた人もいる中で、仲村のお店は今年で6年目になる。中箱に在籍する女性キャストはだいたい20人くらいだが、仲村のお店は35人が在籍している。沖縄では、小箱は25~30坪で在籍は15人ほど。中箱が30~40坪で在籍は30人前後、大箱は40坪以上で35人くらいだ。それを考慮すると、仲村のお店は規模のわりに在籍人数が多く、安定している。

地元では破格の「時給2400円」

私が仲村と知り合ったきっかけは、大学の先輩からの紹介だった。私はまだ大学を卒業しておらず、卒業論文でキャバクラの話を書こうと考えていたのだ。結果、卒業論文よりライターの仕事が先になってしまったけれど、仲村は取材を快く引き受けてくれた。

キャバクラの実態を調査するため、私は松山の数店舗を対象にアンケートをとった。65枚の調査票を配り、53人から回答を得ることができた。「今、働いているキャバクラのいいところ」を聞いた項目では、仲村のキャバクラ以外は「キャスト同士の仲がいいから」という理由が大多数を占めた。

一方、仲村のお店で同じ調査票を15枚配ると、13人から回答が得られた。そのうち全員が「給料がいい」「罰金がない」「バックがいい」と答えていた。バックとは、お客を呼んだり、お客がドリンクを出したりすると、時給とは別でもらえるお金のことを言う。

彼らの給料に対する満足度をそれほどまでに上げるためには、オーナーはどれくらいの年商があればいいのだろうか。仲村は「年商2億円くらいだよ。女の子の給料だけで1億2000万はかかるかな。だいたい年商の60パーセント」と答えてくれた。

アンケートを見ると、仲村の店の日給は1万5000円から4万円となっていた。時給にすると、他店の相場が時給から10パーセント引かれて2000~2300円なのに対し、最低でも2400円。もっと時給が高くてもそこから10パーセントを店に持っていかれるキャバクラもあるのに、仲村の店の待遇は破格と言える。