曽山 中間管理職の責任感が強すぎて、組織の成果を出すという本質を見失ってしまうんですよね。

小室 ええ。こういうチームリーダーは、部下に子育て中の人がいて、本音では「早く帰りたい」と思っていても、無視して「彼女は最後まで仕事をやり遂げたいと言っていますよ」と宣言したりするから、とてもわかりにくいのです。

曽山 サイバーエージェントの場合、業務で詰まっているところを解消するために、「メンター」が活躍しています。メンターとは他部署の先輩にあたる「ナナメ上」の人を指します。

小室 決まった人が誰かのメンターになるのですか?

曽山 いえ、誰が誰のメンターというのは決まっていません。メンターが自然にできる仕掛けを作るんです。「部活動支援」もそのひとつです。野球部やサッカー部、サーフィン部など、いろいろな部活が組織されていて、会社も活動費を補助します。

ねらいは社内のコミュニケーションを活性化させて、部署を超えたナナメの人間関係を作ることなのです。

部下と同じ部活に所属している、自分の同期が「お前のところのあのリーダー、ちょっと悩んでいるみたいだよ」と、さりげなく言ってくれると、「あれ、もしかして自分の仕事の振り方がおかしかったかな」とか「チームのメンバーに、課題が正しく伝わっていないかも」とか、フォローがしやすくなります。

小室 自分の部署以外の視点でアドバイスされると、見えないことに気づきますし、客観的に判断できるのですね。そのためにも、あらゆる社員が、意思表明を習慣づけることは基本的なスキルといえそうですね。

曽山 ええ。でも、メンバーが積極的に意思表明できる会社というのは、上が意識して作っていく気持ちがないと。自然にできるものではないと思います。個人も職場もすぐ思考停止してしまいますから。

私が入社した創業1年目、社員数20名のころは、今のような制度はほとんどありませんでした。人の入れ替わりも相当あったし、私自身「ジギョつく」にも応募したことはなかったんです。「忙しくてそれどころじゃない!」と、思っていました。