7.超党派での国会改革

提言の最後は国会改革を挙げたい。昨年秋の臨時国会では「熟議の国会」を掲げながら掛け声倒れに終わった。民主党の責任は大きいが、野党に対する国民の目も厳しい。与野党で本格的な国会改革の議論を進めるときにきている。国会改革は、法改正を必要とせず与野党が合意すれば即実行できるものが多い。やる気さえあれば「熟議」はできる。

ここで参考になるのは昨年12月上旬、民主、自民、みんなの三党有志8人が出した共同提言だ。有志のメンバーは民主党は馬淵澄夫国土交通相、細野豪志前幹事長代理ら、自民党は河野太郎氏ら、みんなの党は山内康一国対委員長ら。各党中堅クラスの論客だ。

提言内容は(1)党首討論を毎週一回午後8時に開催、(2)政党が法案への投票行動を縛る「党議拘束」の緩和、(3)予算委員会の効率化、(4)「会期不継続原則」の廃止、(5)立法審査と行政監視の分離――などが柱。この中で、特に注目すべきは「予算委の効率化」か。予算委は本来、その名の通り予算案や政策について審議する場だ。だが実際は、スキャンダルや閣僚の問題言動などの追及の舞台になることが多い。これが「政策論議不在」という印象を国民に与えている。だから予算委はもっぱら政策論議の場とし、疑惑についての審議は政治倫理審査会で行うという「役割分担」を図るというのが提言の趣旨だ。

民主党議員の多くは野党時代、「国会のあり方」「統治機構について」など研究を積んできた。8人の提言は、当時の民主党勉強会で出てきたアイデアと大差ない。目の前の懸案への対応に追われ、もともとやろうとしていた改革に手をつけられないだけだ。中堅・若手主導で国会改革を提唱し、首相が党首討論の出席に難色を示せば与野党で抗議するような「元気」があってもいい。

国会改革に関連していえば55年体制の遺物のような国会用語は、可能な限りやめたほうがいい。例えば水面下の交渉による不透明な協議という印象が染みついた「国対(国会対策)」や、政府に「与する」という印象の残る「与党」は変えるべきだ。

国対委員長は、米国の名称をまねて「院内総務」でどうか。「与党」は「政権党」でいいだろう。たかが名前だが、されど名前。変革をアピールするときに名前は大切だ。

このことは「選挙公約」が「マニフェスト」という呼び名に変わったことで選挙に対する国民の意識が一変したことでも証明されている。

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今回書いた7つの案は、実は筆者が野党時代の民主党議員らと議論して「政権を取ったら、こういうことをやろう」と話していたものが中心だ。つまり、突飛なものでも、実現不可能なものでもない。本来なら、政権奪取後、1年半たった今ごろ、実現していてもおかしくない政策だ。

今、これらの政策が手つかずなのは、民主党が自信喪失してしまったからとしか言いようがない。政権を取り、自分たちがやろうとしていたことが困難であることを悟り、実行しようという意欲すら失われているのが現状だ。

ここは、政権を目指していたころの意識に戻り、無理を承知でぶつかるファイティングスピリットを取り戻してほしいものだ。そうすれば、国民の民主党に対する考えも変わり、政権交代前の期待が戻ってくるだろう。