交番の警察官が「財布がなくなったときの状況」を聞くのは、このどちらであるかを判断するためであり、前者であれば「被害届」、後者であれば「遺失物届」を出すことになる。しかし、「移動中になくなった場合、カバンが切られていたりしない限り、落としたか、スリに遭ったのかは普通わからない。加えて、警察は、手間がかかる被害届の受理は避ける傾向がある」(同)。

その結果、紛失と扱われて補償が下りないというケースが出てくるわけだ。では現実に冒頭の状況に置かれたときは、どのように対処すべきなのだろうか。

「盗難が疑われるときは、頑張って被害届を受理してくれるよう、警察に掛け合うことが必要。この場合、『こんな可能性もある、あんな可能性もある』と、善意で一所懸命説明すると逆効果。状況が特定できないということで『紛失ですね』と言われてしまう」(同)

また、銀行で補償を拒否されても、裁判に持ち込めば、可能性はある。それは、「裁判官は盗難と紛失の線引きが難しいことを知っている」(同)からだ。

なお、補償の金額は、被害者に過失がある場合は減額される。軽過失(生年月日を暗証番号にし、生年月日が書かれたカードと共に携行していた場合など)の場合の補償額は75%、重過失(暗証番号をカードに書いていた場合など)は0%となる。

(ライヴ・アート= 図版作成)