7~9月の夏場にも患者が多い「心筋梗塞」。心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈が狭くなり、詰まってしまう疾患である。最悪のケースでは死に結びついてしまう。

この治療でよく知られているのが「心臓カテーテル治療(PTCA)」と「冠状動脈バイパス手術(CABG)」。今日では7対1の割合で圧倒的にPTCAが行われている。

今回はそのPTCAに注目する。

PTCAの基本はバルーン(風船)療法。外科ではなく、内科が行う体にやさしい治療とされている。いわゆる血管内治療である。

肘や手首の動脈、もしくは脚のつけ根の動脈からカテーテルといわれるプラスチック製の細い管を入れ、冠状動脈の閉塞部近くまで挿入する。次にカテーテルからワイヤを伸ばして閉塞部を貫き、バルーン部分の中央が閉塞部の中央に達した時点で数気圧をかけてバルーンをふくらませる。バルーンに押されて血管を閉塞させていた粥腫(じゅくしゅ)(アテローム)が血管の壁のようになり、血液が再び流れ出す。

ただ、このバルーン療法だけでは半年後の再狭窄率が40%前後と高かった。

それを改善するため、バルーン療法を行うと同時に、閉塞部にステントを留置する方法が行われている。ステントとは網目状の金属製の筒で、この留置によって再狭窄率は15%前後にまで低下。つまり、改善率は向上した。

医療の進歩は日進月歩。ステント留置術での再狭窄率15%でもけっしてよしとはしない。今日では、そのステントに改良が加えられ、「薬剤溶出ステント」が用いられている。

血管は3層構造。再狭窄はその血管の最も内側の内膜が壊れ、内膜が治癒する過程でせんい性増殖が起こるためである。それならば、最初から細胞増殖を抑える薬をステントに塗布しておけばいいだろうと考え、作られたものである。

現在、薬剤溶出ステントには、塗布してある薬の違いによって、2種類が使われている。ひとつは免疫抑制剤のシロリムスを塗ったもの、もうひとつは抗ガン剤のパクリタキセルを塗ったものである。14~18日間かけて血管壁に薬剤が染み込み、その結果、再狭窄が抑制される。再狭窄率は約8%と、さらに向上した。

ところが、3年以上経過すると、薬剤溶出ステントはステント血栓症が多く発生するので、再狭窄率で単なるステント留置に比べて優位性がなくなる、という研究報告も発表され、さらなる研究が続けられている。次世代薬剤溶出ステントが期待されるとともに、治療を受けるときは、カテーテル療法に詳しい医師を選ぶべきである。

食生活のワンポイント

心筋梗塞の予防には、食生活が大きく関係する。基本は減塩、低脂肪、低カロリー。

(1)塩分摂取を控える!
 日本人で塩分を摂りすぎないように注意している、という人で1日10グラムは摂っている。普通の人なら13グラムである。これを米国並みに7グラムをめざそう。それには、他の味つけを知ることに加え、素材そのものの味を楽しむ生活を身につけるべきである。

(2)脂肪を控えよう!
 肉は赤身。またはシャブシャブにしたり、焼いたりして脂肪を減少させる。天ぷらや揚げ物は月に1回にするなどして減らす。できたら食べないのが最もいい。

(3)低カロリーを実践!
 食べすぎはカロリー過多のもと。それを防ぐには「早食い」「ながら食い」「ドカ食い」は厳禁。常に腹8分目で満足とする。

(4)お酒は適量!
 基本的には1日1合までとするのが最も体にいい酒量である。

(5)禁煙!
 タバコは血管を収縮させるし、コレステロールが血管に付着しやすくなる。他の疾患リスクも考えると、禁煙が世界の動向。