今年6月、中国が人民元の通貨レート弾力化に踏み切った。中国の経済力から考えて人民元は安すぎるとの批判に応えた格好である。

為替差損が発生したときの会計処理
写真を拡大
為替差損が発生したときの会計処理

人民元が本格的に上昇した場合、中国の輸出企業は痛手を負うことになる。最近は中国国内で賃上げの動きも広がっており、元高が一段と進めば、業績悪化につながる可能性が高い。しかし、政府・金融当局による大幅介入とみられる動きもあり、小幅な値動きにとどまっている。

そこで今回は、為替変動が企業収益に与える影響について整理しておきたい。

海外に輸出を行っている日本企業は、円安なら売り上げが増え、円高では売り上げが減る。たとえば1000ドルの売り上げがあった場合、1ドル=100円なら「1000×100」で10万円だが、1ドル=90円の円高になると「1000×90」で9万円になってしまう。だから輸出企業にとって円高は逆風となる。

ここまでは企業人にとって釈迦に説法であろう。そこで会計処理について話を進めよう。

日々の売り上げは試算表に記入する必要があるが、商いには当然のことながら決済が後日になる売り掛けもある。たとえば1ドル=100円の日に1000ドルの売り上げがあった場合、売り上げと同時に入金があれば、売上金額は10万円だ。しかし入金が1カ月後であれば、その日まで売上代金は確定しない。

そこで多くの企業では、外貨ベースでの売り上げを円換算して会計処理を行っている。それというのも、試算表の通貨単位は円が原則だからである。その際には実勢に合わせて社内レートが用いられることになる。

社内レートの決め方はさまざまで、直近の一定日のレートや、過去一定期間の平均レートを使う例などがある。合理的な根拠があり、監査人が認めるものであればいい。しかし、社内レートはあくまでも便宜上のものであり、実際に入金された際のレートと異なることは珍しくない。

たとえば、1ドル=100円の社内レートで1000ドルの売り上げがあれば、10万円と計上しておく。しかし、実際の入金時のレートが90円なら9万円となって差し引き1万円の損が発生する。これは「為替決済差損」として損益計算書(P/L)の営業外費用に計上される。

また、期末に外貨建てによる未決済の売掛金などの資産がある場合も、決算日のレートで換算する。そこで差損が発生していれば、やはり損益計算書の営業外費用に計上する。

このような為替レートの影響を抑えるために、多くの企業は「為替予約」を行っている。

為替予約とは、先々、取引するレートをあらかじめ決めておき、期日に約束のレートで為替取引を行うもの。予約は「9月1日に1万ドルを1ドル=100円のレートで売る」といった内容になる。このように1ドル=100円と決めておけば、決済日に1ドル=90円の円高になっていたとしても、100円で決済できるので1ドル当たり10円分の為替差損をカバーできる。

もちろん、リスクもある。1ドル=110円の円安になった場合でも100円で決済することになるため、本来生じたはずの10円の為替差益を得ることができない。これは、為替差益を得る機会を逃したことになり、「機会損失」と言い換えられる。

さらに、こんな問題もある。

1万ドル分の為替予約をしたとしよう。しかし不景気で売り上げが伸びず、5000ドル分しか売れていない。それでも期日には1万ドル分を交換しなければならず、不足した5000ドル分をどこからか調達しなくてはならなくなるのだ。

人民元が真の意味で弾力化されれば、人民元の為替予約を行う日本企業も増えるかもしれない。そうなれば企業の財務担当は一層仕事が増えるだろう。