「小さな成功体験」が現場を前向きにする

たとえば「この町の1丁目と2丁目のビール自販機を全部アサヒに変えよう」「繁華街の飲食店の2割にアサヒの樽を入れよう」という、小さくても具体的な目標を立てるのです。それをクリアできると、営業マンには大きな達成感が生まれ、組織全体に「よし、俺もやれるぞ」という前向きの空気が満ちてきます。

忘れてはならないのは、会社を動かしているのは現場の人たちだということです。小さな成功体験を積み重ねることで、彼ら一人ひとりが自分自身の役割を自覚し、その役割を果たすために何をしなければいけないかを理解してくれました。

会社の最大の目標は存続だといわれます。アサヒビールは来年、創業120周年を迎えます。先輩方がしっかりとつないでくださった会社を、いい形で次の世代に引き継いでいく。これが私たち現役世代の役割だと考えれば、商品開発も営業も収益構造の改善もおろそかにはできません。会社全体の大きな役割を把握したうえで、各部門や個々人の役割は何かと考え、一人ひとりが役割を果たしていく。これこそが、会社を正のサイクルに導く王道であると私は考えています。

(面澤淳市=構成 芳地博之=撮影)