トヨタ系が健闘三菱は辛くも2億キープ
トヨタ系が健闘三菱は辛くも2億キープ

勝ち組でもなかなか待遇は上がらず 2010年9月までの「エコカー減税」で上昇気流に乗った自動車業界。しかし、その後について、トヨタ自動車の本社で管理職に就いている40代前半の男性は、冷静に業界動向を見据えている。

「ご存じのとおり、自動車業界は非常に厳しい。今後、さらに海外に生産拠点を移してコスト削減を図っていくとともに、電気自動車の開発などに力を注いでいくことになる。私の年間所得は770万円ですが、満足しています。今の時代、上や下を見てもキリがないですからね」

一方、もう一つの大手、日産自動車に勤務する20代の経理マンはこう嘆く。

「2010年6月、カルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)の10年3月期の報酬が総額約8億9000万円と発表されました。業績が好調ならいざ知らず、ヒット商品がないままジリ貧でこれはない。僕は手取りで約21万円、年収399万円。この差にがく然としました」

そんな不満がうっ積する中、ようやく日産自動車は、10年ぶりに自社開発のハイブリッド車(HV)となる大型セダン「フーガハイブリッド」を発売。今後の巻き返しを図る。

勝ち組でもなかなか待遇は上がらず

勝ち組でもなかなか待遇は上がらず

2010年、日本経済を大きく襲った円高デフレ。流通業界はその対応に追われ、薄利多売の凌ぎ合いを繰り返している。その中でも優勢を保っているのが、ユニクロを展開するファーストリテイリングだ。専門家はこう解説する。

「たとえば、販売効率の悪いロードサイド店を次々と閉店し、都市部に大型店を新規に出店したり、駅ナカや駅ビルなどの小規模店舗も展開するなど、戦略がしっかりしている」

さらに、海外進出も顕著だが、浮足立った出店ラッシュではない。カジュアルメーンだったユニクロに、有名デザイナーを引きこみ、ファッション性の高い店舗への転換もその一例だといえる。

とはいえ、社内での競争は激しい。元社員の20代男性はこう語る。

「大学を卒業後、09年に入社しましたが、給与は手取りで約21万円。年収で約350万円でした。会議も多く、残業もキツい。2010年の春に退職しました」

流通業の大変さを改めて思い知ったとともに、自分の将来を考えたとき、他業種への転職を決断したのだという。

流通部門で2位につけたのが、吉野家ホールディングス。2010年春、ゼンショー傘下の「すき家」、松屋フーズの「松屋」との牛丼の低価格競争で苦戦が続いていた吉野家だが、低価格新商品の開発・販売に舵を切った。9月には牛鍋丼、11月からは低カロリーの牛キムチクッパで勝負に出る。

吉野家の後には、流通最大手のイオン。同社は2010年10月26日、中期経営計画を発表。10年度の売上高は5兆600億円の見込みだが、13年度までに6兆円まで拡大させ、アジア市場の開拓を一層進める方針。この3年間で中国、東南アジア、日本の3本社体制を確立するという。

各業種で国内、海外との境界線はなくなってきている。それは、私たちの年収、生涯賃金とも密接に重なり合ってくることを意味しているのかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時