長男は見事志望校に合格したが、妻が「まだ、本命校の受験が残っている」と言い出した。聞いてみると合格した中学よりも偏差値の高い、ミッション系の中学である。

「子どもがこの学校に入りたいと思って受験して、しかも先様もうちの子を気に入ってくれて、入学してもいいと言ってくださっている。それなのに合格してから、『やっぱりほかの学校がいいです』なんて言うのは無礼である。オレはそんな無礼は許さん!」

とは言ったものの、私はすぐに別の中学の受験を認めた。もし受験させなかったら、妻の心の中には「やっぱり受験させたかった」という不満がいつまでも残ったに違いないからだ。

結果は不合格。しかし、長男が本当に行きたい学校に入学できたということは学校に通い出してわかった。そうなると次男は、あんなに楽しそうに通っている学校なら自分も、となる。

要するに男と女は種が違うから視点も違う。男のロジックに対して、女はイメージで逆襲してくる。イメージ対ロジックで議論しても、ロジックは絶対に勝てない。これは断言できる。だったら一度、女性の言うことを「そうか」と受け入れてしまうしかない。

もし、妻が「どうしても私立!」とまなじりを決して言い張っているなら、まずは「わかった!」と丸呑みすることをお勧めする。そのうえで「どこの私立にしようか」「お金はどうする?」と具体的な方法論を考えるふりをして、妻自身に「やっぱり無理かな」「むしろ子どものためにはならないかもしれないな」と思わせるように持っていけばいい。

女性は現実をよく見るし、子どもに対する愛情も深い。頭ごなしに否定するのではなく、「一緒に子どもにとって最善の道を探そう」というスタンスで話し合っていけば、かならずや家族全員が納得できる結論が見つかるはずだ。

(構成=田中義厚 撮影=尾崎三朗)