両社の代表者は数カ月にわたってミーティングを重ね、コスト削減のために実行できる4つの方法を特定した。

●V社はカートリッジの素材を、現行よりかなり安く調達できるが欠陥率が若干上がるプラスチックに変更可能である。
●V社は現在、B社の各種プリンター・ラインのために3種類のデザインのカートリッジを製造している。B社は、V社が1種類のカートリッジを製造すればすむように仕様を変更できる。
●B社は、各四半期の最低納品量と最高納品量を決めることができる。そうすればV社は、閑散期に社員を解雇し、繁忙期にあらためて雇用・訓練する必要がなくなる。
●製品の欠陥についてB社がさらに大きな責任を引き受ければ、V社は工場での品質検査の回数を減らしてコストを削減できる。

双方の利益になる実行可能な方法を特定したら、それぞれの側が別々に、個々の変革案について実際の費用と削減額を算出する。変革がもたらすチャンスと内外からのプレッシャーによって、どちらの側でも利害が変わることを忘れてはならない。頻繁にミーティングを行うことで、戦略的パートナーはそれぞれ相手の利害の変化をしっかりと把握し、双方の利益になる予想外のチャンスを見つけることができる。

(2)分配をめぐって争うよりも価値の創造を重視しよう

交渉には必ず価値の創造と創造された価値の分配が関わってくる。価値の創造が協力的な活動であるのに対し、価値の分配は一方が得をすればもう一方はたいてい損をする。

きわめて重要な戦略的パートナーと交渉する際には、非戦略的パートナーと交渉するときよりもなお一層、価値の創造を重視しよう。すなわち、ブレーンストーミングにより多くの時間を費やすとか、通常より複雑なパッケージを検討するとか、こちら側のニーズを通常より詳しく伝えるといったことになるだろう。

同時に、分配される価値の最後の1滴まで「こちら側」に取り込むことはさほど重要ではなくなる。長期的な関係を維持すれば、ある取引で断念した価値を取り戻すチャンスはいくらでもあるということだ。

B社とV社は、互いに相手の話にじっくり耳を傾けることによって、コストを削減し、価値を付加する4つの方法を特定した。だが、協力して生み出した削減分や利益を、両社はどのように分配すべきなのか。その答えは、それぞれの側にとって何が最も重要かで決まる。B社はV社に支払う金額を年間5%削減したいと思っていることを思い出していただきたい。そのため、B社とV社は、戦略的パートナーという関係を維持するためには、今年の3000万ドルの契約から150万ドル減らさねばならない。