「組員300人を呼んで血の雨を降らしてやる」

「吉本興業前社長ら逮捕へ 会社乗っ取る 山口組の名でおどし」

1968年1月11日に吉本興業の林正之助前社長が、銀座にあった芸能プロダクション社長と組んで、レコード会社の乗っ取りを画策した際、2人が「電話一本で山口組員300人を呼んで血の雨を降らしてやる」と凄んだとして、恐喝の罪で逮捕されたときの毎日新聞の見出しである(増田晶文著『吉本興業の正体』草思社文庫より)。

フジテレビ夏のイベント「お台場新大陸2014」の制作発表に登場した、お笑いコンビ・雨上がり決死隊の宮迫博之(左)と蛍原徹(右)。(写真=時事通信フォト)

吉本興業と山口組との関係は古い。特に、三代目の田岡一雄組長との付き合いは、つとに知られている。

増田の本の中に、こんなエピソードがある。後に林正之助が会長になった時、彼は芸人たちに、こう訓辞を垂れたというのである。

「ヤクザとは一切関わってはいかん。飯や酒の席はもちろん、電話で話すのもいかん。目を合わせてもいかん。同じ空気を吸うてもいかん。考えられるあらゆる局面でヤクザと接してはいかん!」

自分のこれまでのヤクザとの付き合いを棚に上げて、そういい放ったそうである。

「あんた、僕が双子やというのを知らんかったのか?」

しばらくして、山口組三代目の田岡組長が死去したという報道が、大阪の夕刊紙の一面に掲載された。

これも山口組とのつながりが噂される漫才師・中田カウスが夕刊紙の一面を携えて、林に会いに行った。カウスは田岡の葬儀の写真がデカデカと載った一面を見せ、こう聞いた。

「まことに申し上げにくいんですが、ここに写っているのは会長ではないんでしょうか?」

新聞を一瞥した正之助は、ニコリともせずこういってのけたという。

「カウス君、あんた、僕が双子やというのを知らんかったのか? これは僕やない。弟ですよ。しゃーないやっちゃ。あいつにも、きつういうとかんとあかんな」

この話を思い出したのは、フライデーがスクープした吉本の芸人たちの「闇営業」が話題になっているからだ。

記事のタイトルは、「宮迫博之ほか吉本興業人気芸人が犯罪集団に『闇営業』」(『フライデー』6/21号)。闇営業というのは、所属事務所を通さないで、相手側と直取引することである。