数あるアイスクリームブランドの中でも、高価格帯で圧倒的な人気を誇る「ハーゲンダッツ」。世界中にファンを持つが、日本ではバニラ味がダントツで販売数量1位なのだという。なぜ、日本人はそこまでバニラアイスが好きなのか。経済ジャーナリストの高井尚之氏がその謎に迫った――。
日本での販売数量が1位の「ミニカップ バニラ」。発売35周年を記念し、6月にパッケージデザインを一新した(写真提供=ハーゲンダッツ ジャパン)

別格上位に君臨するブランドアイス

スーパーやコンビニで手軽に買える「家庭用アイスクリーム」の市場は年々拡大し、2017年度には「5000億円」の大台を突破した。この春夏もアイスメーカーやコンビニから新商品が発売されている。だが「アイス売り場」の激戦区で生き残るのは、ほんのわずかだ。

そんな家庭用アイス市場で、年間売上高100億円を超えるメガブランドは、1位「明治 エッセルスーパーカップ」(明治)を筆頭に、2位「パピコ」(江崎グリコ)、3位「パルム」(森永乳業)などがある。その詳細は「"アイスの王"スーパーカップ人気の秘密」(5月6日)でも紹介した。

だが、この順位は単品ブランドのランキングで、表には入らない“別枠1位”がある。それが「ハーゲンダッツ」(ハーゲンダッツジャパン)だ。高級アイスの代名詞として知られ、シリーズ全体の売上高は500億円を超える。

6月11日に期間限定発売する「キャラメルバタークッキー」(同)

1984年に日本に上陸した外資系ブランドだが、現在も日本向けの新商品や限定商品を積極的に投入している。例えば6月11日にミニカップ(110ミリリットル)の「ハーゲンダッツ ミニカップ キャラメルバタークッキー」(種類別ではアイスクリーム。消費税込みで319円)、6月25日には「同 バナナ&マスカルポーネ」(同アイスミルク。319円)を限定発売する。これらはカップアイスだが、クリスピーサンドやバーアイスでも限定商品は多い。

国内販売を始めて35年のロングセラーブランドは、なぜ高いのに売れ続けているのか。同社に取材し、強さの秘密に迫った。

スプーンが入らない“カッチカチで濃厚”の秘密

「ハーゲンダッツは長年、人気トップ3の『バニラ』『ストロベリー』『グリーンティー』の定番フレーバーを軸に、お客さまの好みと向き合いながら、期間限定のフレーバーも出し続けてきました。一貫して大人の方に支持されており、『自分へのごほうび』や『大切な人と一緒に食べたい』といった時にも選んでいただけます」

ハーゲンダッツジャパンの黒岩俊介氏(ブランド戦略本部マネージャー)はこう説明し、モノづくりへの思いを続ける。

「例えばハーゲンダッツのレシピは『世界共通』です。特に商品の生命線である主原料のミルクにはこだわってきました。日本では北海道の根釧地区(根室・釧路地区)の新鮮なミルクを使っており、酪農家は牧草が育つ土づくり、乳牛1頭1頭の体調に合わせた飼料の調整まで気を配っています」

さらに「濃厚なアイスクリーム」への思いも強い。

「アイスクリームを口にした時の舌ざわりにもこだわります。素材に加えて、なめらかで濃厚な味わいを出すために、空気の含有率を20%~30%と低く抑えています」(黒岩氏)