支払いを忘れて居酒屋やカラオケボックス、ネットカフェなどの精算カウンターを通り過ぎて、店を出ていき、店員が背後から呼び止めてきたところを殴りつける。あるいは.まえてきた腕を振りほどいて転倒させる。その程度のことは、泥酔して判断力が低下していると、うっかりやってしまいかねない。

利益強盗や事後強盗は、典型的な強盗の形からは懸け離れている。だが、私たちの日常生活と隣り合わせで潜んでいる犯罪行為といえよう。

幸い、前に述べたタクシー運転手に対する強盗致傷に問われた件で、大河内弁護士は捜査側に働きかけ、「処分保留で釈放」となった。

「雑談してるときに刑事が『ここに彼が来たときはもうベロベロだったんですよ』と口を滑らせたのです。ベロベロなら、ワケがわからなくて、運賃を踏み倒す意思も何もないということでね」(同)

ただ、それでは強盗致傷罪は免れても、運転手を傘で殴った傷害罪に問われかねない。

「傷害では罰金だけで終わるので納得できないと考えた検察は、強盗致傷で頑張りましたが、無理して起訴しても無罪判決が出てしまう。日本の刑事裁判は99.9%有罪の世界ですから、1件でも自分の担当が無罪になれば黒星。だから起訴されなかった」(同)

忘年会や正月、新年会シーズンには、適度な酒量は守りたいところだ。

(ライヴ・アート= 図版作成)