吉高由里子主演のドラマ「わたし、定時で帰ります。」が話題だ。それはまだ定時で帰れる人が少数派であることの証しだろう。しかし、「ノー残業」を実践し、社長になった人は過去にもたくさんいる。ポイントはどこにあるのか。ジャーナリストの溝上憲文氏が社長たちのエピソードを紹介する――。
画像=「わたし、定時で帰ります。」(TBS系火曜22時)の公式HPより

「わたし、定時で帰ります。」を実践し大出世した人がいる

テレビドラマ「わたし、定時で帰ります。」(TBS系火曜22時)が人気だ。

ウェブ広告会社の主人公の女性社員(吉高由里子)が、残業体質のはびこる職場の軋轢(あつれき)に耐えながら自分の信念を毅然(きぜん)と貫く姿勢に、同世代を中心とした視聴者の共感が集まっているようだ。

「働き方改革」で残業削減が進み、以前に比べれば定時退社のしやすい雰囲気になってはいる。しかし、周囲が残業しているのに、自分だけ定時退社できる勇気のある人はまだ少ないのではないか。だから主人公にエールを送る視聴者が多いのだろう。

残業する理由は、大きく以下の3つに分かれる。

(1)仕事が終わらない
(2)帰りにくい雰囲気がある
(3)残業代がほしい

これらとは別に「仕事が好きでたまらない」という人もいるかもしれないが、これは(3)の「残業代がほしい」と同じく、残業に積極的な意味を見いだしているので、定時退社できずに苦しむ人の範疇には入らないだろう。

定時に帰りたいのに「仕事が終わらない」「帰りにくい」

問題は、定時に帰りたいのに、(1)の「仕事が終わらない」、(2)の「帰りにくい」という人だ。

(1)の「仕事が終わらない」は悩ましい。仕事が終わらない理由として「しなくてもよい仕事を押しつけている会社」と「本人の非効率な仕事のやり方」の2つが考えられる。

前者については、本来1日の法定労働時間の8時間以内に収まる仕事(工数)を与えるのが基本だ。だが、社員の減少による人手不足や業務量の増大によって残業を余儀なくされている人も多いのではないか。こういう会社では、いくら個人でがんばって仕事をこなしても「定時退社」はそもそも無理な話だ。早く帰ろうものなら袋だたきに遭いかねないブラック企業度が極めて高い。

一方、後者の「本人の非効率な仕事のやり方」については工夫の余地があり、定時退社も可能だ。

(2)の「帰りにくい」のはいわゆる「つきあい残業」だ。

以前は上司より先に帰ると「人事評価が悪くなる」と気にする人もいたが、今では逆に残業時間が長い人が疎まれる傾向にある。仕事でやることをやっていれば上司や同僚の顔色をうかがう必要もないし、本人に勇気があれば解決する問題だろう。