先月、パリの街角で、見かけた子供に向かって「かわいい~」と言ったところ、その母親が「メルシ」と答えてくれました。思った通り「かわいい」は「KAWAII」という言葉として通じるようです。日本のマンガやアニメブームを反映して、キティちゃんやドラえもん、セーラームーンやプリキュアなどのキャラクターが大人気となり、それらの絵柄が付いたグッズが「KAWAII」と言われるようになって「KAWAII」という言葉自体が欧米でも定着してきました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどでは「カッワイイ!」という感じになります。面白いのはロシアで、かわいいという言葉の発音が難しいようで、「カヴァーイ」とか「カヴァーイヌイー」という言い方になるようです。

Galerie Thaddaeus Ropacの「トム・サック展」に出展されたかわいいアヒル
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Galerie Thaddaeus Ropacの「トム・サック展」に出展されたかわいいアヒル

もともと「かわいい」という単語は、大きいものよりも小さいもの、四角いものよりも丸いもの、大人よりは幼いものに対して使うことばです。その典型的な例は赤ちゃん。赤ちゃんが幼くてかわいい存在であることは「枕草子」をはじめとする日本の古典文学に頻繁に登場しています。

ところが、現代では大きいもの、大人、男性、権威に対しても「かわいい」という言葉を使う風潮があります。極端な例では天皇陛下に対しても「かわいい」と叫ぶ輩がいるそうで、驚きました。(大塚英志『少女たちの「かわいい」天皇:サブカルチャー天皇論』角川書店)ただ、決して、揶揄しているわけではなく、自分よりも優れている人に対して使うケースが多く、悪意はまったくないという点も非常に興味深い傾向だと思います。

また、「かわいい」は人物や動物に対する感情を表すだけではありません。たとえば、お気に入りの車や自転車、サーフボードやケータイ電話に対しても「かわいい」ということもあるし、カッコよくてカワイイ=カッコカワイイとか気持ち悪くてかわいい=キモカワイイ、不細工でかわいい=ブスカワなどと、バラエティに富んだカテゴリー分けもあります。そんな新しい言葉やその使い方も含めて世界中に伝播している日本語といえるでしょう。