日本のように民主党政権下であれもこれもやるといいながら、結局何をやろうとしているのかわからない国というのは、世界から評価されない。勢いがいい国というのは、1つか2つのことに集中して取り組んでいるものだ。

たとえばシンガポール。多国籍企業がアジア本社を置く金融センターを目指して、法律を変え、税金も安くしている。アジアの金融センターとして生きていくことに国を挙げて取り組んでいるから、福祉をどうするとか、少子高齢化をどうするといった議論はほとんど(外には)聞こえてこない。

また、人口730万人の小国でありながら、国民一人当たりGDPは世界トップクラスのスイスには、銀行や製薬など世界一の会社がたくさんある。ネスレは世界最大の食品会社だし、海がないのにスルザーという会社は船舶用ディーゼルエンジンで世界一だ。

スイスは世界のマーケットで活躍するということに徹底した国だ。スイスの多国籍企業がどれだけ徹底しているかというと、社員が海外赴任して10年も20年も本社に戻らないことがざらにある。それゆえ親子が離れても暮らせるように、小学校から高校まで全寮制の学校を世界一充実させている。

学費はもちろん、親が年に何回か帰国したり、バケーション時に子供が親元を訪ねる費用なども全部会社持ち。親子が泣き別れても世界で稼ぐ。その徹底ぶりがスイスの強さなのだ。

少子高齢化に歯止めがかからず、もはや国内市場の成長が見込めない日本は、退路を断って世界に出ていかなければ生き残れない。コンシューマ商品は人間の頭数と胃袋の数しか伸びないのである。商売の場所だけではない。仕事先にしても、資産の運用先にしても、これからは日本以外のところに求めていかざるをえない。

しかし日本人の多くは、そんな発想、あるいは決意がまったくできていない。企業は海外進出に尻込みし、むしろ撤退傾向。金融資産は相変わらず国内の銀行やゆうちょに積まれたまま。巡り巡って国債を消化するための原資になっている始末だ。