「儲け話がある」としてUSBメモリで投資教材を売りつけるトラブルが、首都圏の大学で急増している。トラブルの相談を受けた教育アドバイザーの鳥居りんこ氏は「20歳以上はいわゆる『未成年者取消』ができない。わが子がトラブルに巻き込まれないように、保護者は注意が必要です」と訴える――。

なんのヘンテツもないUSB49万円を購入するまでの一部始終

長い受験期間を終え、子どもが晴れて大学生になった親御さんの中には「ようやく子育ても終了」と安堵されている方もいることだろう。大学生の多くは在学中に成年になるため「子育て終了宣言」が出てもおかしくはない。

しかし、である。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Imazee)

この「若葉マーク成年」が怪しい業者の格好のターゲットになっている事実をご存じだろうか? 筆者は思春期の子どもを持つ親たちから悩みや相談を持ちかけられることが多いが、最近も都内在住の大学生の母親から相談を受けた。

「USBメモリを媒体とする投資関連学習教材」をめぐるトラブルである。20歳の男子大学生A君は都内の有名大学に通っている。そのA君をトラブルに巻き込んだのは、高校時代の同級生Bだった。

「久しぶり! 飯でもどう?」というBからの突然の誘いが事のはじまりである。知らない仲ではないのでA君は快諾。食事をしているうちに、Bはこんな話をしだしたそうだ。

「Aは今、バイト何やってるの? それ、時給、安すぎじゃね? 大きな声じゃ言えないけど、俺、今、すごく稼げるバイトしてるんだよね……。(略)でも、これって限られた人にしか教えられないけど、Aだからいいかな……」

そんな前置きを入れて、「今度、すごい人に会わせてあげるよ。絶対、会ったほうがいいから!」と言うなり、すかさず、その“すごい人”に電話をしてアポ取り。あれよあれよという間に3人で会う約束を取り付けられてしまったらしい。

「日経225の先物取引で確実に儲かるシステム」入りUSBメモリ

後日、その見るからに儲かっているオーラを出している自称投資家Cが現れ、金回りの良さをアピール。そこから長時間にわたって洗脳トークを浴びせられたという。

Cは「日経225の先物取引で確実に儲かるシステム」を力説。そのシステムが入っているというUSBメモリを49万円で購入するよう勧誘。「そんな額、とても払えないですよ」とA君が断わると、こう言われたという。

「ローンで払えばいい、儲かるのですぐに返済できる」

さらに、

「このシステムを人に紹介するとバックマージンとして一人あたり5万円貰えるよ」
「今、決断できないやつは一生クズ」
「チャンスは来たときに、即、つかまないと!」

ほぼ軟禁状態でこれを長時間、聞かされ続けたそうだ。

「友達のBがやっている」つまり「Bが儲け話をタダで教えるのはBにとって損なのに、自分を特別に思ってくれているから誘ってくれている=断ってはBに悪い」という心理にさせて追い込んでいくやり口らしいが、Cの威圧感も手伝って、次第にA君は相手の思うつぼにはまっていった。