「参院選に向けて結集」どころではない

「令和」フィーバーは、やや沈静化しつつあるが、各種世論調査では、国民の多くが新元号を好意的に受け止め、その恩恵を受けて安倍政権の支持も急回復している。一方、野党の方は忘れられた存在になっている。

しかし、野党の現状を考えると、忘れられたままの方が幸せかもしれない。各党の間ではいがみ合いが深刻になり、参院選に向けて結集するどころか、むしろ遠心力が働いているのだ。

記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表=2019年3月26日、国会内(写真=時事通信フォト)

他党に激震を走らせた立憲民主党の「引き抜き」宣言

「今日、確認した方針に基づいて、当面の統一地方選、参院選に向けた準備と合わせて活動を進めていきたい」

3月26日、立憲民主党の枝野幸男代表は会見で「当面の活動方針」というA4、1枚の紙を配布した。当時はメディアも「新元号」報道で浮わついていたこともあり、この会見のことは、ほとんど報じられなかった。しかし野党各党に激震を走らせたのだ。

「活動方針」は6項目からなる。概要は、

1:政権獲得の準備のために「政権構想委員会」をつくる。
2:「経済政策調査会」を設置する。
3:総合選挙対策本部に「立憲ビジョン策定委員会」を立ち上げる。
4:5月をメドに参院選1人区の候補者調整を進める。
5:参院選の比例区は「立憲民主党」として戦う。20人以上の擁立を目指す。
6:衆院選の候補者擁立を全国的に進める。

というもの。一見しただけでは他の野党を刺激する問題をはらんでいるとは思えない。

「1」から「3」までは「会議好きの立憲民主党が、またたくさんの会議を立ち上げたのか」という突っ込みが聞こえてきそうだが、他党に実害がある話ではない。問題は「5」と「6」である。

「5」の参院選の比例区では単独で戦うという方針は、既に枝野氏が何度も繰り返していることだが、今回は正式な文書で明記された。比例区で野党が協力して1つの候補者名簿をつくる統一名簿方式を目指す他の党をがっかりさせたのは事実だ。

さらに問題視されたのは「6」。この項目だけ末尾にかっこつきで、擁立する候補の対象について「前回他党や無所属で立候補した方で、立憲民主党と政策理念等を共有する方を含む」と補足説明がついている。つまり「他党の候補を引き抜く」と取れる。