アメリカの人気TVドラマシリーズに出てくるオフィス。そこに登場するオフィスの壁には必ず現代アートの作品が飾ってあります。また、20代から40代の女性に大人気のTVドラマシリーズで映画版も大ヒットしている「Sex and The City」の4人の女性主人公の職業はそれぞれ人気コラムニスト、広告代理店社長、弁護士、そしてアートディーラーです。それだけ、アートはニューヨークで生活の一部となっているわけです。パリ、ロンドン、いえ、ソウルや香港、上海でも、オフィスや自宅にたくさん現代アートは飾られ、ごく身近なものになっています。それらはどうやって手に入れるのでしょうか。

実は意外なことに、直接ギャラリーから買うだけではなく、アートフェアで購入するケースが多いのです。アートフェアとは、毎年、春と秋に開催されるギャラリーフェアのことで、有名なものではニューヨークのアーモリーショウ、スイスのアートバーゼル、マイアミのアートバーゼルマイアミ、ロンドンのフリーズアートフェア、香港アートフェア、上海アートフェア、アートフェア東京などがあります。

ホテルの客室を会場にしたアートフェア<br>
アラタニウラノ2008年度展示風景(作品:小西紀之)<br>
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ホテルの客室を会場にしたアートフェアアラタニウラノ2008年度展示風景(作品:小西紀之) ©Art@Agnes

また、最近では神楽坂のホテルアグネスの客室を会場にしたアートフェア「ART@AGNES」や、大阪の堂島ホテルを会場にした「ART OSAKA」など、自宅に合うサイズの作品に絞った身近な小規模なアートフェアも各都市で開催され始めています。これらのアートフェアのメリットは、たくさんのギャラリーが一度に見られ、そのギャラリーのイチオシのアーティストの作品が真っ先に購入出来ることにあります。

中でも、世界最大で歴史と権威があるアートフェアはスイスのアートバーゼル。私はアートバーゼルで、ある有名な富豪コレクターがちょっとした時間差で気に行った日本人アーティストの作品を買い逃し、アーティストに直接「いくらだ?君の人生を買おう、いくらだ?」と詰め寄る場面を目撃したことがあります。

各ギャラリーがイチオシアーティストの作品を展示<br>
ミヅマアートギャラリー2008年度展示風景(作品:棚田 康司)<br>
©Art@Agnes
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各ギャラリーがイチオシアーティストの作品を展示ミヅマアートギャラリー2008年度展示風景(作品:棚田 康司) ©Art@Agnes

バーゼルではギャラリーブースに収まらないプロジェクトタイプの作品(巨大であったり、高額であったり、いずれにせよ展示場所を選ぶ作品)のための巨大な会場「アート・アンリミテッド」も用意されています。数年前、建築家である石上純也さんの厚さが3ミリしかない強化アルミで出来ている高さ1.1メートル、幅2.6メートル、長さが9.5メートルという特大サイズの「テーブル」の作品は、この「アート・アンリミテッド」で発表され、そのままイスラエル美術館にコレクションされました。クオリティの高い作品をきちんとした場所で発表すれば、確実に売れることの証明でもあります。

基本的にアーティストが作品を預けたギャラリーから購入者に販売されるのが「プライマリー・マーケット」と呼ばれ、オークション会社やコレクターから作品を仕入れて販売される市場を「セカンダリー・マーケット」と呼びます。アートフェアというのはギャラリーが集合する「プライマリー・マーケット」そのもので、オークションは「セカンダリー・マーケット」になります。多忙な人々がギャラリーに行く時間がないので、アートフェアで購入する、そういう人の数が増えているのは非常に理解できる話です。また、価値が定まらないアーティストに手を出しにくい人にとっては、オークション会社がプロの目で選んだアーティストを購入できることは有り難いことに違いありません。